【課外活動】与えられたチャンスを大切に―「英語」と「介護」に向き合った学生生活―

サークル活動

今回の先輩大図鑑は、津田塾大学学芸学部国際関係学科4年の田川加菜さん(以下、加菜ちゃん)にインタビューさせていただきました。

この春大学を卒業する加菜ちゃん。彼女の4年間の大学生活を、「英語」「介護」という一見関係のない2つのキーワードをもとに紐解いていきます。コンプレックスをもばねにしてパワフルに道を切り拓いていく彼女の姿に、あなたもきっとパワーをもらえるはず。

これからの大学生活に不安を抱いている学生の皆さん、そして、これから大学に入学する新1年生の皆さん、加菜ちゃんの言葉から学生生活を充実させるヒントをもらえるはずです。

英語

「泣いてばかりだった」

―加菜ちゃんは、ESSのスピーチセクション(英語スピーチをするサークル)で大学1年生から3年生まで活動してたよね。そもそも、なぜESSに入ろうと思ったの?

私は受験とかで英語で失敗していた記憶があって、他の人に比べて英語ができない自分にコンプレックスを抱いてたんだよね。だから、ESSで結果を出して、自分に自信が持てるくらいになろうと思ったの。

 

のちに数々の大会で活躍するようになる加菜ちゃん。でも、1年生の当時はなかなか上手くいかず苦戦したそう。

ESSに入ってから最初に経験したのが、レシテーションコンテストっていう、200~300wordsくらいの原稿を暗記してスピーチするコンテストだったの。その時の私は、たった200~300wordsなのに全然覚えられなくて。たくさん練習したのに、当日緊張で全部飛んでしまって。私が参加したのは校内予選で、選ばれればその先に進めるのね。校内予選は突破したいと思っていたけど、結局それもできなかった。とにかく、もっともっとうまくならなきゃと思ったな。

レシテーションコンテストの後、1年生の6月ごろ、次は自分で原稿を書くタイプのコンテスト(プリペアドスピーチ)があったの。それで校内で1位を取れて、他の大学と合同の大会に出られることになったんだ。少し成功できたかもと思えて、頑張れるきっかけになったかな。でも、大会に行ってみたら、もっともっと強い人たちがたくさんいた。誰もが知っているような有名な大学の名前が並んでて、加えて出場者の多くが帰国子女で。そんな人たちに勝ち目は全然なくて(笑)、審査員の先生にもコテンパンにやられちゃった。自信持ったのもつかの間、また自信を無くしちゃったの。

当時は、スピーチの世界に飛び込んだはいいものの、なかなかうまくいかないし、辞めたほうがいいのかなとか考えてたな。1年生の時は本当に泣いてばかりだった。まだ大学生活始まったばかりだし、今なら引き返せるし、辞めようかなとも思ったけど、もうちょっと頑張った先にもっと自分に自信を持てるような世界があったらいいなって思って。結局3年間ESSを続けることにしたよ。

▲スピーチの大会にて

チームを支えるチーフに

一度ESSを辞めることまで考えたという加菜ちゃんですが、その後数々の大会に出場するようになり、3年生ではスピーチセクションのチーフも務めました。

1年生の時は英語力もなかったけど、何度もやっていくうちに実力も上がっていって、全国大会にはかなり出られるようになったよ。3年生になったら逆に自分が勝てないと思っていた他大学の人にもだんだん勝てるようになってきたの。

 

―すごい。諦めずに取り組んでいたことが実を結んできたんだね。3年生でチーフをやっていた時はどんなことをしていたの?

 チーフの仕事としては、メンバーにレクチャーをして、スピーチの書き方、話し方を教えたりしていたよ。そもそも、そのレクチャーを確立したのも私の代だったの。実は、1年生の時は先輩に教わるということはあまりなくて、同級生同士で教えあったり、他大学の先輩に教えてもらったりしてたんだよね。だから、チームとしては弱くて、全国大会に全然出られない位だった。その現状を見て、やる気をもって入って来てくれた後輩たちに十分指導ができてないなって思っていたんだ。

スピーチを作るのは1人では出来なくて、他の先輩や同級生に添削してもらいながら練り上げていくの。私たちのチームはその添削を出来る人が少なかったんんだ。添削できる人だけは添削するっていう状態だと、組織全体としてはとても弱いよね。だから、レクチャーを通してみんなの知識のレベルをそろえて、メンバーみんながお互いの原稿を添削できるような状態に持っていこうと思ったよ。2年生以上の人は後輩の添削が必ずできるようにしたんだ。その効果もあってか、1年間でチームのメンバーが全国大会に出られる回数も4倍くらいに増えたよ。

―スピーチって基本的には1人でするものじゃん。だから「自分だけが強くなればいいや」って思考にもなれるよね。組織を動かすのはやっぱり力がいることだと思うんだけど、面倒だなって思わなかった?

面倒だとは思ったんだけど(笑)、いろんな大会に出たときに、私たちに比べて他の大学はチーム感がすごかったんだよね。実際ステージに立つのは1人だけど、バックにたくさんの先輩や仲間がいて、まるで自分の子どもかのように応援している様子を見ていたの。自分たちにはあまりそれがなかったからすごく悲しくて。後輩に同じ思いをさせたくないなっていうのと、自分の居場所が欲しいみたいな気持ちが原動力になったかな。

最初大会に出始めたときは他の大学から下に見られてしまうようなことがあったんだけど、活動を通してだんだんみんなが力をつけていくにつれて、チーム全体の評価も上がっていって。「やっぱ津田塾は強いよね」ってなると、大学の名前も光るようになってくるし、自信が持ててくる。次第に堂々とステージに立てるようになってきたよ。

▲仲間たちとの集合写真!

介護

スピーチを通して伝える介護への思い

加菜ちゃんの大学生活を紐解くもう一つのキーワード、介護。彼女が最初に介護をテーマに動き出したのはやはりスピーチの場でした。後に、彼女は介護をテーマに卒論を書くまでになります。

津田塾大学に全国から選ばれた学生が集まって毎年開催される、「梅子杯」っていうスピーチの大会があるんだけど、1年生の秋にその大会に出る人を決める校内予選があったの。その原稿を書くときにテーマにしたのが介護だった。これは後に大学生活を通して向き合っていくテーマになったよ。

 

―なぜ介護をテーマにスピーチを書こうと思ったの?

私が大学1年生の時に亡くなった祖父がきっかけ。祖父は、私が高校3年の夏ごろに末期がんが見つかって、もう助かる見込みがないから、自宅で介護をしようということになったの。介護のドキュメンタリーとかでは、「家族の絆」とかきれいな言葉で表されたりするけれど、現実はやっぱりそんなきれいな言葉にはまとめられないんだよね。介護を受けている人は、自分で出来たことが1人でできなくなったりすることで「自分が自分じゃなくなっていく瞬間」が多いの。

最初は介助を受けたときに「ありがとう」って言ってくれていた祖父も、だんだんと介護をしていた母に対する悪口やネガティブな発言が目立つようになってきて。私は途中で大学に進学して実家を離れてしまったから、最期の様子はあまり見れていないけど、ゴールデンウィークとかに帰省すると、親に当たり散らしている様子を見たりもしたんだ。

自宅で介護をしている人って、家っていう閉鎖的な空間に閉じ込められてしまうんだよね。そんな人たちをもう少し外に出してあげて、もうちょっと当事者の人達が同じような状況を共有することができるんじゃないかと思ったんだ。それをもとに原稿を書いたの。原稿自体は簡単なものだったけど、せっかく人前で発信できる場だから、若い人に介護のことをもっと知ってほしい、私たちにも何かできるんじゃないかって伝えたかったの。

結果としては校内予選を通過することは出来なかったんだけど、内容自体は好評で、別の大会に出る機会を頂けたんだ。この思いが伝わったんだ!って嬉しかったな。

▲STEM Leadersで活動している様子

IT×介護の可能性

―スピーチの大会をただ“英語スピーチの大会”として消費するのではなくて、伝えたいメッセージを発信する場として捉えて、しっかり思いの乗ったスピーチをしていたんだね。介護に関しては他の団体でも活動していたの?

NPO法人STEM Leadersっていう、ITを活用して社会課題の解決を目指す団体に所属して、介護に関するプロジェクトに取り組んでるよ。この団体は、3年生の時に後輩に紹介してもらって、試しに行ってみたら、介護ハッカソン(プログラミングのコンテスト)に出場する学生の支援をしているって聞いて、この団体ならITを活用した介護のプロジェクトに参加できるんじゃないかと思って入ったんだ。

介護に関して、若い人たちにも何かできるかもって1年生の時から思っていて、介護している当事者同士を繋いで、コミュニケーションを取れるような環境を作ることで支えたいなって思ってたの。1年生の時はそこまでしか考えられなかったけど、ITという武器に出会ったことで、若い人だからこそ介護の持つ問題を解決につなげられるかもしれないって思ったんだ。スピーチ大会でいくら熱く語っても、実際の解決には結びつかないわけで。自らの手で何かできるかもって可能性に対して望みを持っていたから、取り組み始めたよ。

4年生になって、団体の人事を任されるようになって、人をたくさん集めたら逆に人数があり余ってしまったのね(笑)だから、新しいプロジェクトを作ろうってなったの。介護ハッカソンの支援をしているというものの、団体に介護のプロジェクトがまだちゃんとなかったから、介護ハッカソン経験者とか色んな学生を誘って就活が終わった後に介護プロジェクトを立ち上げたんだ。それからは11月にイベントを開催したり、3月の介護ハッカソンに出たりとかした!

 

―ITを活用した介護って、具体的にどんなことを構想しているの?

介護に使うマッチングアプリ的なものを構想していて。介護を受ける本人が、自分が介助が必要な時に要請すると、それを登録している人たちに通知が届いて、UBER EATSみたいに介護が提供できるシステム。これから介護を必要とする人はどんどん増えていくと思うし、おのずとそれにかかるお金も増えてくると思うんだ。だから、協力したいって思っているボランティアと介護を必要とする人を繋ぐことができたらなと思ってるよ。地域での支えあいを実現できるように考えてる。

 

―すごい。必要な人に必要な分だけサービスが届く、これから更に求められていくサービスになりそうだね。加菜ちゃんはこの春大学を卒業すると思うけど、今後はどうするの?

IT企業に就職が決まっているよ。STEM Leaders の目指すところと就職先の理念に共通点があるんだ。あと、就職先の公用語が英語だから大学生活を通して培った英語力を活かすこともできるかなって思ってる!

最後に

―最後に、この記事を読んでくれている後輩たちに伝えたいことはある?

大学生活を振り返ってみると、私が何かに取り組む時って誰かが与えてくれたチャンスがきっかけになっていることが多くて。与えられたチャンスを1つ1つ拾っていって、それが今の自分に繋がっていった気がするの。大学の中にも外にも色んな人や機会との出会いがあるから、それをちょっとずつこなしていくことで、自分が本当にやりたいことが見つかったり、思いがけない場所に繋がっていったりすると思う。だから、目の前にあるチャンスを大切にしてほしいな。

コンプレックスですらあった英語に向き合い続ける、自分だけではなくチームが良くなるように行動する、自らの経験から若い人に「介護」を伝える…言葉にするのは簡単でも、誰にでも出来ることではないと思います。チャンスを大切にすること、そして地道に取り組み続けることの大切さを改めて感じるインタビューでした。

筆者と加菜ちゃんが出会ったのは大学の入学式。これから始まる大学生活に緊張していたあの日からちょうど4年、大学生活を振り返って語る彼女はキラキラしていて、私もとても嬉しくなりました。

加菜ちゃんの言葉が、読者の皆さんの学生生活を充実させるヒントになることを願っています。

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