【番外編】—第1部—なぜ日本人は英語が話せないのか? —日本の教育システムと日本社会の密接な関係—

Column

今回の先輩大図鑑は…番外編です!!

2年半日本の公立高校でALTとして勤務していたアメリカ出身のありあさん。

現在はアメリカに帰国し、大学院で英語教育について研究しています。

初めて日本を訪れたのは、ありあさんが留学生のとき。アメリカとは全く異なる受験システムを知り、驚きを隠せなかったと言います。

今回は、日本の受験戦争を経験した筆者からの視点と、アメリカ人であるありあさんの客観的な視点を交えて、日本とアメリカ教育システムを比較し、日本人が英語を話せない理由を探っていきます!!なんとその原因は日本の文化や価値観にあった…!?

勉強しているのに、なぜ喋れないのか?

筆者:日本では、小学校から英語教育が始まるのに、全然話せるようにならないじゃん?だから、私は「長期留学をして、なんとしても英語を話せるようになりたい!」ってずっと思ってたんだけど、ありあは大学生になってから日本語の勉強を始めたのにもうペラペラじゃん。何が違うんだろう。アメリカの外国語教育はどんな感じなの?

アメリカの外国語教育は選択制

ありあ:小学校では外国語教育はなかったね。中学でも高校でも、授業のほとんどが選択制で、「外国語」自体を取るかどうかはその人の自由だった。

私の中学校では、外国語はスペイン語、フランス語、ドイツ語、の中から選べたよ。高校でもこの3つから選べたんだけど、私が3年生のときにさらにそこに中国語の授業が加わった。中国語には興味が湧いたから、そこで初めて外国語の授業というものを取ったよ。 

:もう中学校の時点で選択授業なんだね。しかも言語を複数から選べるんだ。

受験のための英語だから喋れない

ありあ:外国語=英語に縛られてるのも窮屈だと思うけど、もっと大きな問題が他にあると思う。日本では小学校から英語教育が始まるのに、高校では英語は受験のための「科目」であって「言語」として見られていない。そんな状況で話せるようになるわけがないと思う。

 

筆者:たしかに。小学校の時から英語を勉強してるのに、高校卒業時に英語を話せる人ってほとんどいない。

 

ありあ:日本人の友達みんなに言われるのよ、「中学から真面目に英語やってるのに全然話せない」って。十何年もやってきて話せないっておかしくない?

 

筆者:中学校でも毎日1時間くらい英語を勉強してるのに喋れないのはなんでだと思う?時間は十分かけてるのに

 

ありあ:やっぱり、ゴールが受験になっているからだと思う。共通テストの英語をなくすか、すごく難易度を下げるとかしないと。そうしないと、英語を使って会話をすることはなかなかできるようにならない。…もう日本の「受験」のシステムが嫌いすぎて!(笑)

 

筆者:そんなに嫌いなの(笑)アメリカの大学受験とはどう違うの?

 

ありあ:日本の推薦入試に似てるって聞いたことがある。試験に加えて、なぜその大学に入りたいのか、自分がどういう人間なのかについてのエッセイを書かなくちゃいけない。学校生活とか、いろいろな要素があるから、成績だけがよくてもトップの大学には入れない。自分の時間をどう使ってきたかが重視される。例えばボランティア活動をたくさんやりました、とか。

 

筆者:そうなんだ。確かに、日本で一般入試で面接がある大学は少ないし、入試で人柄なんて見ないもん。

 

 

受験が及ぼす精神的悪影響

 

ありあ:何より、「受験に全てがかかっている」ということが受験生に与えるプレッシャーがひどい。生徒のメンタルによくない。自分の人生の1年間、人によっては幼稚園から、全てを受験勉強だけに捧げるっていうのは、私には想像もつかない。

 

筆者:私の友達は、大学受験で鬱になったんだよね。プレッシャーをかけれらすぎたんだと思う。志望した大学全て不合格で、周りのみんなが受かっている様子を見てどんどん追い詰められて行って。毎日泣いて、散歩の途中に突然堰を切ったように泣き出してしまうような、情緒不安定な日々がずっと続いたんだって。やがて「辛い」という感情さえも抱けない、無感情な状態になってしまった。経験談はこちら→https://crews-clues.com/schoolife/

 

ありあ高校の教え子たちに向けて動画を作ったことがあるんだけど、最後に「全力でがんばれ」っていうメッセージを残したの。でも「ありあみたいに頑張らないと」ってみんなが自分のことを追い込みすぎちゃうんじゃないかってすごい心配になって、最後にかなり強調して「でも無理しないでね」って付け加えたよね(笑)

 

 

教師も苦しむ大学受験

ありあ:こうやって、学生を追い込むじゃん、この日本の学歴社会!!学生をそんな精神状態に追い込めるなんて、本当に恐ろしいと思う。それにね、この受験システム、生徒だけじゃなくて教師も苦しむ。

 

筆者:どんなところで教師も苦しむの? 

 

ありあ:私の友達で、今高校3年生の担任をしている人がいるんだ。新学期が始まった頃は、みんな明るくて教えるのがすごく楽しいって言ってたんだけど、受験が近づくにつれてどんどん暗くなっていった。ついに学校にいきたくないと言い始めた。受験のための英語以外に何も教えられないのが辛いと言ってた。それに、生徒は受験勉強のために学校を休むようになる。でも先生たちは、受験のために教えようとして一生懸命準備してくるんだよね。

 

筆者:受験に人生かかっていると思っている保護者も少なくないから、モンスターペアレントからのプレッシャーもすごそう。

 

ありあ:彼自身も生徒と同時に暗くなった。仕事の話を嫌がるようになって、そもそも喋る気力さえなくなってしまったみたいだった。私も教師だったから、前は教育とか授業の話が楽しくてすごく盛り上がってたのに、授業の話自体が彼にとって辛いものになってしまった。

学校の期末テストが終わって、やっと共通テストのリスニングのCDを流すだけの授業になってからは、彼も少し楽になったみたい。彼の気持ちが楽になったのは嬉しいけど、教師として楽しい授業ではないと思う。

 

 

衝撃だった日本の「受験」と「就活」

 

受験生ホストブラザーに話しかけたら、部屋から出られなくなった。

 

ありあ:私が日本に留学したときに、ホストブラザーが受験生だったの。事前にホストマザーと連絡を取ったときに、「彼はアメリカが大好きだから、気が合うと思う」と言われたから、仲良くなろうと思ってたんだよね。

でも受験生だったから、塾で帰りが遅くてあまり話す機会がなくて。ある日、彼が休憩してるときに、「英語の勉強で何か質問があったらいつでも聞いてね」って言ったんだけど、何も聞きにこなくて。だから、このままじゃ仲良くなれないと思って、「日本語の勉強で聞きたいことがあるから教えて欲しい」って言ったら、初めてちゃんと二人で話ができたの。

そのとき、ホストマザーは私たちが話してる様子を見て知っていたけど、私が教えてもらっていると気づいたとたんにブチ切れた。「彼の時間を無駄にしないでくれ」って。私が教えている方だと思っていたらしい。

それ以降、夜9時以降は部屋から出るなと言われた。まだ滞在日数があと2週間あったから、その後はかなり気まずかったな〜。

それが初めて「受験」を知ったときかな。受験生の生活というものをそこで初めて知った。 

 

筆者:えええ、留学中にそれはきついな!でもいい異文化体験だったね(笑)

 

 

「協調性」が求められる日本の就活

ありあ:あとは、就活。アメリカの就活は日本と違って完全に個人でやるものなんだよね。大学から何も強制されないから、積極的に行動しないと就職先が決まってない状態で大学生活が終わっちゃう。だからこそアメリカの教育は個人性や自分の意見を主張出来る人を育てるんじゃないかな?もう少し日本みたいにアメリカの社会も大学も大学生の就活を助けてくれればいいのにって思うけどね(笑)

 

筆者:外国人の友達に話を聞いていても、比較的日本は仕事を見つけやすいみたいだね。

 

ありあ私以外の留学生もみんな驚いてたんだけど、とにかく衝撃的だったのは、1月になって4年生に進級した友人たちがみんなスーツで大学に来るようになったころのこと。しかもみんな全く同じ真っ黒のスーツ!真っ黒の大群が大勢で動いてて、上から見てるとゴキブリみたいだった(笑)

 

筆者:ゴキブリ(笑) でも私も、みんなが同じ格好をする必要があるっていうのが理解できない。個性を殺して他の人たちと同じような格好で面接をして、その中から企業が選別するなんておかしいと思う。

 

ありあ:日本社会では個性よりも協調性が大事だからなのかもしれないね。もちろん協調性はとても大切なことだけど、個性を殺してしまうのは非常にもったいない。

 

筆者:大学名で採用決定する企業も少なくないもんなあ。だからみんな「いい大学」を目指すし、それに人生の全てがかかっていると思ってしまう。教育のシステムを変えるにはこういった背景も視野に入れなくてはいけないね。

 

ありあ:アメリカの個人性ばかりが育つ教育も良くないと思うから、逆にアメリカはもっと強調性が育つような教育が必要だと思う。そこはアメリカが日本に見習うべきだと思う。

 

筆者:お互いに学ぶべきところはたくさんあるね。

 

 

第1部では、ありあさんが日本の学校に勤めた経験から、日本人が英語を話せない理由や日本社会に潜む問題について語っていただきました。

アメリカ、日本どちらの学校も経験したありあさんだからこそ語れるお話でしたね。

続く第2部は、明日公開です。お楽しみに!!

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