【課外活動】休学して農業を学ぶ─国際協力への疑問から有機農業の道へ─

課外活動

今回の先輩大図鑑は、上智大学総合グローバル学部を今年3月に卒業した(インタビュー時は在学中)、蓮見千明さんです。


2015年に大学に入学した千明さんは、2017年4月から2年間休学し、栃木県にあるアジア学院で有機農業やそれに関わるコミュニティ作りなどに関して学びました。農業を学ぼうと思ったきっかけから、休学中・復学後のお話まで、たっぷり伺いました。


大学の外で何か挑戦したいと思っている人、自分や社会に対してもやもやを抱えている人、千明さんの言葉から何か良いヒントが見つかるかもしれません。

「国際協力」への考え方の変化から休学へ

―そもそも、休学しようと思ったきっかけは何ですか?

私は、2015年に上智大学の総合グローバル学部に入学しました。グローバルな問題は上からの視点(国際政治とか)だけでは解決できないし、草の根レベルのアプローチだけでも解決できないですよね。だから、多角的な視点を持つ人材を作ることが狙いの学部だと思います。

入学当初は中国のアフリカでの存在感に興味があったんです。中国のことを自分で勉強していたときに、中国の社会における存在感みたいなものに関心を持つようになったんです。特に、中国はアフリカに多くの援助をしているけれど、その援助が現地の人のためになっていないケースも多いことを知ったんです。のちに、それは中国だけではなくて色んな国で同じようなことが起きているという事を知るようになりました。

その気付きから、現地の人のためになる援助をするために監視したり、援助を提案する立場になりたいと思っていたんです。

「開発とか援助って必要なの?」

でも、大学で学んでく中で、開発とか援助とか必要なの?って思うようになったんです。開発や援助はいいものだと思っていたけど、国際協力機関が行っていることが、現地の人のためになっていないものを押し付けていることも多いという事に気付くようになって。もちろん良いものもあるけど、そうじゃないことも多い。次第に開発懐疑派になっていきました。

開発はいいもののはずなのに、コミュニティを壊してしまったり、お金だけの豊かさを押し付けてしまったり、結果的に彼らが幸せにならない方向に行ってしまう…こんなことがなぜ起きるんだろう?と考えたんですが、自分としては

①実施する側が地域の文脈を理解していない。

②豊かさ=お金という物差しだけで測られている

という理由が大きいかなと考えました。そこから、自分が国際協力するのなら、現地で一緒に暮らして働いて、現場に則した支援をしたいと思うようになったんです。

でも、ただ現地に飛び込めば協力できるというわけではなくて、コミュニティの中に入るにはコミュニティに必要とされるようなスキルが必要ですよね。

そこから、間にとって一番身近な食に関わる農業はどこでも大事なスキルだなと考えて、アジア学院で有機農業・コミュニティ作り・農村リーダーシップを学ぶことにしました。

「頭でっかちになっている」

開発・援助の現実に怒りを覚えて、「いいことのように見えて、結果的に誰かを苦しめてしまっている」―その構図が許せなかったんですよね。でも自分の足元を見たときに、自分が何を食べるか?何を着るか?が誰かの苦しみのもとになってしまっていることにも気付いて。社会の在り方に対して疑問や怒りを抱いているにも関わらず、足元では何も変化が起こせていない自分が嫌いになって、かなり考え込んでしまっていました。

私は2年生の夏に島根県隠岐島にある海士町(あまちょう)にインターンシップに行きました。そこで、海士町でお世話になった方から、「頭でっかちになっている」と言われたんです。私は本や授業で学んだ知識しか持っていなくて、現地の様子も何も知らないまま、悩んだり、考え込んだりしてしまっている。まさに「頭でっかち」です。その言葉は自分にとって大きくて、休学に踏み切るきっかけにもなりました。

▲海士町のきれいな海!

アジア学院での2年間

―休学中、アジア学院ではどんな生活を送っていたんですか?

1年目はアジア学院で学生として学んでいました。アジア学院は日本人を対象にした学校ではなくて、アジアやアフリカで学校やNGOなどのコミュニティで働く方が研修を受けに来る場所です。

だから、学生のバックグラウンドは多様です。こでは、学生もインターン生だけでなく、ボランティアや職員までも同じ寮に住み、まさに一つの村みたいな場所に住んでました。

アジア学院で学ぶことは大きく分けて有機農業※、農村リーダーシップ、コミュニティ作りの3つ。農家さんに研修に行ったりもしました。

※有機農業…化学肥料や化学農薬を使わない、持続可能な農業。なお、有機JASのマークが有機農業でできた作物のマークとして知られているが、有機JASには使っていい/いけない化学肥料・化学農薬が定められているので、必ずしも化学肥料・化学農薬が全く使われていないわけではない。

 

2年目はアジア学院でインターン生として勉強させてもらいました。インターンの中にも様々な仕事があるけど、私は農場で訪問者の方を誘導したり、農作業やアジア学院自体を説明する役割を担ってました。

あとは、ボランティアをしている人たちのリーダー的な立場として働いたり。加えて、アニマルウェルフェア※に関するプロジェクトも行ったりしていました。

※アニマルウェルフェア…「感受性を持つ生き物としての家畜に心を寄り添わせ、誕生から死を迎えるまでの間、ストレスをできる限り少なく、行動要求が満たされた、健康的な生活ができる飼育方法をめざす畜産のあり方です。」(出典:一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会 「アニマルウェルフェアとは」 )

アジア学院についてもっと知りたい方はこちら!

Q そもそも、アジア学院って?

Q どんなことが学べるの?

Q アジア学院で学ぶには?(日本語ページ英語ページ

▲アジア学院の仲間たちと!

休学を経て

―2年間の休学を経て、ご自身に変化はありましたか?

仲がいい友達がみんな卒業しちゃったことは大きな変化でした(笑)

それはさておき、行動は起こすようになったかなと思います環境系のサークルに入って活動しはじめたんです。大学は都心にあってなかなか自然に触れられるような環境ではないのですが、花壇を使わせてもらって大学内でパーマカルチャー※の実践をしようと試みたりしました。 

あと、元々議論の場などで意見はよく言う方なんですが、アジア学院では意見を積極的にいう人が多いから、それに慣れてしまって。さらに意見をよく言うようになったかもしれないです。ゼミなどで他の人の意見をつぶしていないか心配になったりもしました。

※パーマカルチャー…「パーマネント(永続性)と農業(アグリカルチャー)、そして文化(カルチャー)を組み合わせた言葉で、永続可能な農業をもとに永続可能な文化、即ち、人と自然が共に豊かになるような関係を築いていくためのデザイン手法」(出典:Permaculture Center Japan パーマカルチャーとは

▲サークルで環境啓発トークセッションを開催

東京を離れたからこその気付き 

あとは、自然の中でずっと生活をしていたので、土に触れない生活に慣れるのが大変でした。何かと緑を求めてましたね(笑)アジア学院にいる時と東京での生活は本当に別世界みたいな感じなので。

東京を離れた期間を経て気付いたこともありました。アジア学院に行くまでは東京での消費スタイルなどに疑問を抱いていたのです。

でも、アジア学院の学生としてイベントに参加するために東京に行ったらすごい奇抜な服を着ている人がいたりとか、そういうのは東京のいいところだなと思います。

いろんな考え方や生き方が受け入れられるような場というのは、東京のいいところだなと思いましたね田舎だとなかなか受け入れられないというか、浮いてしまうことが東京だと自然に受け入れられるという事も多いと思うので。 

「人づくり」に関わりたい

―大学生活や休学期間を通して多くのことを学んできた千明さん。大学を卒業し、これから取り組みたいことなどはありますか?

最終的にはオルタナティブ教育、特に地域に根ざした教育をしたい。幼少期に自然体験をして、いい思い出がある人ほど環境に関心を持ったりすることが多いという研究結果があるそうなんです。自分の住む土地に対して愛着を持って行動していける人を育てていきたいです。

※オルタナティブ教育…学校教育法で規定されていない教育法で、シュタイナー教育やモンテッソーリ教育などが代表的。探求型授業や無学年制・少人数クラス等が特徴で、思考力や行動力が身につくというメリットがある。様々な方法があるため、詳しくは出典URLを参照されたい。(出典:スタスタ「オルタナティブ教育とは?特徴やメリット・デメリット」)

今行われている教育は、個人が幸せになるためというよりかは、日本の経済発展の力になる人を育てるみたいな感じだと思う。それもあって、どうしても自分が住んでいる場所に対する愛着は持ちづらかったりして、自分の住んでるところが遅れてる、豊かじゃないって思ってしまいがち。それって悲しいことだなって思います。

1人1人が変われば社会も変わっていくと思っているので、そのような「人づくり」に関わっていきたいです。

「休んでもいい」

―最後に、千明さんから今の大学生に向けて伝えたいことはありますか?

大学生活送るのに大事なのって、まさに様々な選択における「クリティカルシンキング」だと思っています。それは授業選びとかだけではなくて、サークル選びでも、進路選びでも、自分が何を選ぶのか?本当にやりたいことなのか?をよく考えて選んでいくことが大切だと思います。

あとは、休んでもいいという事も伝えたいです。疲れてしまったとき、それはきっとその環境が自分に合ってないだけ。世界には自分が自分らしくいられて、能力が生かせるような場所がたくさんあるはず。だから、自分を責めたり、無理に自分をその場所に当てはめようとしなくて大丈夫だって思います。

優しい話し方と、芯の通った考え方に、千明さんの素敵な人柄が垣間見えるような1時間のインタビューでした。これからのご活躍が今からとても楽しみです。

新学期、環境がガラッと変わった人も多いと思います。なかなか思い通りにいかないことも多く、もやもやしていたり、少し疲れてしまった、なんて方も多いかもしれません。この記事が、そんなあなたが少し勇気をもらえるきっかけになれば幸いです。

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