【映画監督】役者から監督へ —大好きな芝居と向き合い続ける—

課外活動

今回の先輩大図鑑は、映像作品制作を手がける鳴(Meli) Productionの総合プロデューサー・成沢清奈さん。

7年間ミュージカルをしていた清奈さんは2020年夏、自ら団体を立ち上げ、監督・脚本家としてリモートムービー制作の活動を始めました。

役者として、そして監督・脚本家として活動してきた彼女が、何を思い、感じてきたのかお話を伺いました。

Meli(鳴) Production設立に込められた想い

演じる側から作り手側へ

―役者としてではなく、監督・脚本家として活動を始めたのには何かきっかけがあったの?

演じることをやりたいとは思ったの。もとから演じる側だったから。だけど、向いていないというか、実力があまりないことに気づいた。それは努力しようとしなかったわけではないんだけど、7年ミュージカルをやってきて、自分の動画を見返しても自分であんまり納得いかなくて。

1作品、一旦作り手に回ってみようと思ってやってみたの。そしたらそれがめちゃめちゃ面白くて。一回の私の言葉で役者の芝居がめちゃめちゃ変わるんよ。自分の言葉で作品が作れるのって面白いって思って、作り手側に回ってみることにした。

全国から輝ける人がいてほしい

―清奈ちゃんが総合プロデューサーを務める鳴(Meli)Productionは、どんな活動をしているの?

「全国から輝ける人がいてほしい」っていう想いから、オンラインで全国の役者と繋がって、その人たちを輝かせる作品を作ってるよ。

これまでに4作品を公開してて、今は5作品目の制作をしているところだね。

―「全国から輝ける人がいてほしい」どうしてそういう風に思うようになったの?

私が舞台をしていた頃の友達が何人か、東京に出て芸能活動をしているんだよね。でも東京に出たからといってすぐに芽が出るわけじゃないし、重ねてコロナの影響でそもそも活動自体できないっていう状況があったのね。

当たり前なんだけど、映像作品はスキルのある人が出た方が良いに決まってる。でもスキルがまだないと言われる役者でも、その個性を伸ばせる場所ってあった方が良いと思ったの。

プロからしたら「甘えてる」って言われちゃうかもしれないけれど、下積みの人たちが成長できる場がなさすぎるというか、評価されないのは違うなって私は思うから、そういうプロじゃなくても輝ける場を作りたくて。

私が作る作品なんてまだまだ全然アマチュアだけど、でも役者を志す人が必要としている場数の一つにでもなるならめっちゃ良くない?

▲演技の指導をする様子

リモートムービー制作という挑戦

―1つの作品を作る時、どんな流れで出来上がるの?

最初にまず企画。ストーリーの原案を考える。

企画ができたら企画会議にもっていって複数人で話し合う。より面白みのある作品を作りたいから、他の脚本の子とか演出の子と話して没になった企画もあるよ。

企画が会議で通ったら脚本を作って、脚本が出来上がったら今度は役者の募集をかけるのとコマ割りの会議を同時にする。

役者を決めるのにはオーディションをすることもあって、過去にはインドから役者が参加してくれたこともあったね。コマ割りの会議っていうのは、カット割りを決めるって言ったらわかりやすいかな。メイキング映像とかでよく「よーい、アクション!」「はいカット!」って言葉をきくと思うんだけど、コマ割りの会議では脚本をもとに、どこからどこまでをどうワンカットで収めるか決める。

そのあとは役者と連携をとって、撮影に入る。リモートムービーの撮影はZoomのレコーディング機能を使って行ったよ。

意外と一番大変なのが、役者との日程調整だった。社会人の役者が空いている時間帯はだいたい夜なんだけど、私がアルバイトしてる時間と被ってしまうから…

撮影を終えたらカットごとにベストな映像を選んで、編集して出来上がるっていう感じ。

―そうなんや、、たしか清奈ちゃんアルバイトもいろんなのを掛け持ちしてやってたよね。 それにしてもインドからってすごい…! リモートムービーだからこそだね。

 

―リモートならではの難しさって何かあったりするの?

Zoomを使ったリモート撮影だと、動きがない分セリフの出し方がめちゃめちゃ大事になってくるのね。普通の映像作品は役者の動きがしっかりあるから、今こういう風にこの人たちが何をしていてっていうのがわかるんだけど、完全リモートだとセリフの力を使って、登場人物の人柄とか気持ちを表現してもらわないといけなくて、そこが難しいところだね。

あとは、役者同士の対話が生まれにくいっていうのもリモートならではの難しさだと思う。オフラインで会えると「ここはこうやってほしい」っていう役者同士の対話が自然と生まれるけど、リモートだとそういうやりとりが生まれにくい。

 

―監督として何か気をつけていることはある?

私は「役者主体」のものが好きだから、「ここはどう思いますか?」って質問をよくする。はっきり要望を出させてもらうことももちろんあるけれど、役者自身に考えてもらいたい時には安易に何でも言わないようにしているよ。

「役者主体」っていう点で言うと、「マリッジマシーン」(2020年11月公開)も、「ここから出られなくても」(2020年11月公開)も2分くらいのアドリブが入ってる。

▲撮影の準備をする様子

作り続けて学んだ4つのこと

―すでに4本の作品を公開して今は5本目の制作中ということだけど、これまで作品を作ってきて気づいたこと、学んだことはある?

1.続けないと意味がない

気づいたことは4つあって、

まず、続けないと意味がないっていうことはすごく思った。1回作って、1回目で納得いかないから次も頑張る、次も頑張るって風にやってきてるの。だから進むごとに自分の中での満足度は上がっているし、役者との関わり方も正直ちょっと変わってきてるなって思う。作り続けているからこそ、いかに役者の意見が重要かってこともわかった。

2.自分一人では何もできない

2つ目に、自分一人の力では何もできないってことがわかった。一番はじめの頃は、脚本、監督、編集、広報…って全部私一人がやっていたんだけど、それをちょっと違う人にやってもらったらやっぱり違うものになるやん?

納得いかないってところももちろんあるけど、でも全部一人でやっていると、自分が疲れているっていうのもわかるんだよね。やっていたことが多すぎて自分のことばかりになって、違う視点から見れなくなっていった。結局全体を俯瞰する人がリーダーじゃないとダメだなって思ったの。人に頼んで分配して、自分のやれることにフォーカスした方が完成度は高くなるって今は思う。

3.人間は面白い

3つ目は人間は面白いってこと。人を描くとき、同じような人にならないようにはしつつ、バックグラウンドとかを考えるのに、今まで自分が会ってきた人とか、いろんな人を参考にするのね。この人はこういう経験をしたからこうなるのかなとか、考えれば考えるほど面白くて。そういう人間の面白みを描ける人になりたいんだ。

4.お芝居は面白い

4つ目に、お芝居は面白いっていうこと。お芝居の世界にはオーディションがあって、私自身役者として活動していた時はいろんな舞台のオーディションを受けてたんだ。でもやっぱり難しいんよね、「めっちゃうまくやれた」って思ったのに落ちたりとか、逆に「なんでここに受かったんだろう」っていうこともももちろんある。

なんか多分そういう理論で説明できないいろんなものがあるから、人の視点は面白いし、奥が深いなっていうのはすごく思った。だから私も人の視点が持ち得る奥の深さを理解して作品を作りたい。

 

―清奈ちゃん自身も人に選ばれる経験・落とされる経験をたくさんして、もやっとはしなかったの?

いや、する、するよ?(笑)落ちた時は「なんで?」って思う。

今までは「落ちた」ダメージがめちゃめちゃでかかった。最後に受けたオーディションでは、想定外の結果に「え、なんで?私、決まったキャストの人よりも絶対できる」って思う人やった。でもあとからその配役の意図を知って、理解して、それから考え方が変わるようになった。変えた方が自分のパフォーマンスも上がった。

 

―変わるっていうのは?

視点の転換というか、「私が落ちたのは自分の実力不足じゃなくて、この人と合わなかったからだ」って思う。ご縁がなかったっていうそれだけ。「なんで?」って思うんやけど、「ま、いいか」とも思えるんやよね。「この先自分に一番合う人を見つけるためなんだな」って解釈をできるようになった。ポジティブにいきましょう、みたいな。

 

―ネガティブになることはないの?

めっちゃあるよ。特に高校時代はよく人と比べてしまって、自分の存在価値を見失ったこともあった。

勉強ができる人ばかりの環境で「あれ?何もできなくない?勉強できないと生きていけない、終わったんだけど、何もできないわ」って。で、次は「自分には音楽がある」って思ったんだけど、「でも別にトランペット特別上手くないな」って思って。で、次に「お芝居できるって言えないかな」って思ったんだけど、「もっとお芝居について知っている人いっぱいいるし、自分なんか全然だめだな」ってめっちゃ思って。

「自分とは?」っていうのをずっと考えてた。これから先もきっとネガティブにはなるんやけど、その期間があればさらに何とかなるって思ってるところもある。めっちゃ沈むっていう性格は自分でわかってるし、「嫌だし、悩んでるし、苦しい」って時もあるけど、同時に「今より沈むことはきっとないやろ」「なんとかなる」って思う自分もどこかにちゃんといるの。

▲「電車のフィクション」を意識して撮ってもらった一枚

「誰もやらないことがしたい」作品作りを通して彼女が目指す夢とは

大切にしてきたフロンティア精神

―清奈ちゃんの原動力は何ですか?

何だろう、、高校時代に「レジェンド」ってあだ名をもらったことかな?(笑)もうそれになろうと、自分から寄せにいってるところがある(笑)

あとは私は「誰もやらないことがしたい」、これはずっと思ってたこと。「みんなが手を挙げている時には絶対手を挙げたくない」、「みんなAならBに行きたい」、「ディベートは少数の方に行きたい」とかって思う。英語の授業で「Who wants to go first?」って言われたら、絶対最初に手挙げちゃうもん。変な奴だって思われたと思う(笑)。そのクラスには帰国子女の子とか私より英語が上手な子はもちろんたくさんいたの。

でもできなくても、普通じゃないことが自分では一番だから。目立ちたがりで負けず嫌いなのよね。普通が嫌、普通のレールに乗りたくないって。未開拓のところに行きたいっていう、フロンティア精神を持ち続けてる。

自分の夢を叶えることと誰かの夢を応援することは多分つながってる

―今後の目標や夢は何かある?

すべての子どもに教育機会を与えるっていうのは高校の時から言っていて、その根幹は今も変わってない。子どもに夢を与えられる仕事をしたいなって思って、その手段として大学に行った。

一方でずっと続けてきた芝居が好きっていうのも変わらない。映画監督や作品作りをずっとしていきたいと思ってる。

もし私が舞台の作品を作っていることをみんなに知ってもらえれば、夢をあきらめないで済む人は増えるかもしれない。

そして作品を作っていくことは、誰かを輝かせること、誰かの夢を応援することでもあると思う。

だから結局、一緒なんだよね。自分の夢を叶えることと人の背中を押すことは多分一緒だと思う。

清奈さんがMeli(鳴) Productionを立ち上げたのは新型コロナウイルスが世界中で蔓延した2020年夏。

実は清奈さんはこの夏からオランダの大学へ進学することが決まっていました。

海外進学の道が絶たれた後も、自分の置かれた状況、これまでの経験をプラスの方向へ活かし、前へ進み続けてきた清奈さん。

筆者は彼女の明るさとユーモアの裏に凛とした強さを感じました。

清奈さんの言葉が追い風となってみなさんのもとに届きますように。

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