【課外活動】言語も文化も異なる地「タイ」で得た大切なもの

課外活動

今回紹介するのは、大学4年生のあかりさん。

彼女は、教職課程や日本語教員養成課程に加え、バイトやサークルにも励む、とても忙しい学生です。そんな忙しいスケジュールをこなしながら自分のやりたいことをみつけ、1年間大学を休学、国際交流基金の「“日本語パートナーズ”派遣事業」というプログラムに参加し、タイで生活をおくりました。

物腰柔らかい雰囲気の彼女ですが、経験談を聞くこと通して、タイへの熱い思いが感じられました。

とある授業がきっかけで、念願のタイへ。

ータイで「“日本語パートナーズ”派遣事業」として活動したということですが、そもそもどうしてタイに行こうと思ったのですか?

理由は大きく2つあります。

1つは、タイ語を勉強したいという思いからです。自分が通っている大学には第二外国語としてタイ語がないので、実際に現地に行ってタイ語を学びたいと思っていました。大学の協定校にはタイの学校がないので、自分でタイに行ける方法を探さなくてはと思っていたときに、大学の授業で「“日本語パートナーズ”派遣事業」を知って、「これならタイにいけるかも!」と思いました。留学という形ではなく、現地のコミュニティに入って生活するというところにも魅力を感じました。

もう1つは、幼い頃住んでいたタイという国に恩返しをしたいと思ったからです。当時タイの国の方々に大変お世話になりました。大学の日本語教員養成課程の授業で、タイで日本語教育が盛んに行われていると聞いて、それなら日本人として何か役に立てるのではないかと思い「“日本語パートナーズ”派遣事業」に応募しました。

ー予期せぬところでタイ渡航に関する情報をゲットしたあかりさん。チャンスをものにするためには、どのような行動が必要だったのでしょうか。

選考は、書類に志望理由や、現地で挑戦してみたいことなどを書き、それが通れば面接があるという感じです。面接時はタイ語の能力は問われませんが、ある程度コミュニケーションがとれるレベルの英語力が問われました。面接を通過し内定すると、事前研修として埼玉の研修所に約1ヶ月間泊まって、現地の言語や文化、日本語教育についての基本的な知識を身に付けます。現地では英語が通じないことも多いので、この1か月で日常生活レベルのタイ語を習得することが求められます。

同時期に派遣される20歳から69歳までの仲間たちと一緒に研修をするので、様々な年代の価値観に触れることも刺激になりました。

 

ー多忙な学校生活を送るなか、書類審査や面接審査、そして事前研修をこなし、いよいよ待ちに待った現地での生活。現地住民、学生と密着した生活が始まりました。言語も文化も異なるタイで、「日本語パートナーズ」としてどのような生活を送っていたのでしょうか?

平日は朝から夕方まで、現地の学校で日本語の先生や生徒のサポートをしていました。

毎回の授業に入って日本について20分程度紹介したり、日本語の発音のお手本をしたり、机間巡視をして生徒の質問に答えたり…。放課後には生徒に日本語を教え、学校のイベントで七夕や日本食などを紹介することもありました。

タイの方々に日本のことを少しでも好きになってもらいたいという思いで日本語と日本文化を紹介していましたね。

土日は基本的に休みでした。

授業の用意をして過ごしたり、現地学校の日本語の先生方にタイの観光名所を案内していただいたりしました。夏休みなどの大きな休みの際には、パートナーズの友人とタイ国内を旅行して、タイという国への理解を深めました。

 

ー平日はまるで学校の先生のようなハードな生活。休日を使ってリフレッシュしていたとはいえ、さすがに大変だったことかと思います。もう少し、タイでの生活で大変だったことについて聞いてみました。

タイで生活していて、文化の違いなどを感じることもありました。しかし、私の場合はそれら1つ1つを楽しんでいたので、そういう面で大変だと思ったことはあまり多くありません。

しかし、現地の日本語の先生との関係や、派遣先での生活環境に苦労するパートナーズもいました。家に毎日羽蟻が出たり、近所の野良犬にかまれてしまったり。タイの辛い食べものが合わずに苦労していた人も…。そのなかで「どう生活していくか」工夫をしたり、「派遣校に貢献するために自分は何ができるか」と考えたりしながらみんな頑張っていました。

 

ー現地の先生との関係がとてもよかった一方、言語も文化も異なる国、タイで、文化の違いを感じることがあったというあかりさん。文化が異なる地で生活すると、自分の考え方や、それを形成してきた社会を見直すことにもつながりそうですね。“日本語パートナーズ”派遣事業の参加者は、文化や習慣の違い、コミュニケーションなど、様々な局面で困難を乗り越える力が求められていたようです。

地学生に、こどもの日の兜について教えている様子

10ヶ月を通して深まった現地の人との絆。出会いに感謝。

ー大変なこともあった一方で、タイに行ってよかったと思えることはありますか?

たくさんありますが、私の場合は、現地の日本語の先生方ととても深い関係を築けたことです。

先生方と10カ月間ほぼ毎日一緒に過ごし、色々な話をしながらお互いの理解を深めました。派遣校の日本語の先生は2人いましたが、その2人のことを家族でも友人でも仕事仲間でもなく、でも家族と並ぶくらい本当に大事な存在と感じています。日本に帰ってきてからも連絡を取り続けています。言語や宗教、育ってきた環境が違うにも関わらず、ここまで深い関係を築け、大切な存在ができたということはとてもありがたい経験でした。

生徒ともたくさん交流をすることができました。

タイの生徒たちはとても素直で人懐っこいので、覚えたての日本語で気さくに話しかけてくれました。授業以外の時間にも一緒にかるたなどで遊んだり、タイの遊びを教えてもらったり、放課後に一緒にご飯を食べに行ったりしたことも良い思い出です。タイの学校ではスマホの持ち込みが認められているので、一緒に写真や動画を撮る機会も多くありました。私の絵を描いて渡しに来てくれる生徒もいました。

私は大学で教職の勉強はしていますが、実際に教師ではありませんし、“日本人”ということだけでこのプログラムに参加しましたが、そんな私でも教師のような体験をさせていただきました。今でもその子たちとは連絡を取っていますが、「この子たちの将来がとても楽しみだな」といつも思っています。そのような機会をいただいたことにも感謝していますし、この関係をこれからも大切にし、サポートも続けていきたいと思っています。

現地学生と仲良く交流しながらかるたをしている様子

また、ずっと行きたかったタイという国に行くことができ、幼い頃住んでた時には見えていなかったタイの姿が見えてとても新鮮でした。言語的な面でも「タイ語を学びたい」という気持ちがずっとあったので、1年弱過ごしながらタイ語も学ぶことができ、検定にも挑戦できたことは自信になりました。

そして、少しでも派遣校の役に立てるよう、「どのようなことをやろうか」「こういうイベント企画しようか」など考える機会が多くあったため、その中で新しいことを企画したり、実行したりする力をつけられたのではないかと感じています。

 

ー10ヶ月のタイでの生活を通して、様々なものを得ることができたようですね。最後に、これから学生生活を送る後輩たちに何か伝えたいことはありますか? 

このプログラム自体、もとは2020年に終わる予定だったと聞いています。オリンピックまでに日本のファンを増やそうという目的があったようです。しかし、現地からの続行希望の声が多くあり、今年や来年も派遣される予定でした。これからの派遣がどうなるのかは分かりませんが、もしチャンスがあればぜひ挑戦してほしいです。

留学などとはまた違った経験が得られるはずです!心からお勧めできるプログラムです。「“日本語パートナーズ”派遣事業」はホームページなども充実しているので、気になった方は調べてみると現地での生活や活動の様子などもイメージできるのではないかと思います。

 

ーこの語りを通して、彼女のタイやタイで出会った人々に対する強い感謝の想いが伝わってきました。言語も文化も異なる国でたった1人で生活していくことは、決して簡単ではありません。出会いを大切にし、その出会いを与えてくれた機会に感謝できる彼女だからこそ、素敵な経験として振り返ることができるのかもしれません。

新型コロナウィルスの感染拡大によって始まったオンライン期間、私たちが失ったものは少なくありません。そのようななかでも得られる、様々な人、ものとの出会いの場や機会に感謝し、大切にできることが、素敵な経験を得られる1つの鍵かもしれませんね。

この記事が、皆さんが素敵な経験を得られる「きっかけ」になることを願っています。

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