【休学】誰の愛も届かない場所で。アフリカの紛争・テロの解決に挑み続ける女子大生

課外活動

今回の先輩大図鑑は、津田塾大学学芸学部国際関係学科(現在休学中)のすぎちゃんにインタビューをさせていただきました!

すぎちゃんは、大学入学当初から学業に熱心に取り組み、ルワンダでのフィールドワーク調査を実施するため2020年4月より休学。

しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、ルワンダへの渡航は現在まで実現することができない状況に。

そんな彼女は、アフリカ(ソマリア・ケニア・イエメン)の紛争やテロ問題を解決する特定非営利活動法人 Accept International(以下、アクセプト)に所属し、より熱心に活動に取り組んでいます。

彼女はなぜ「遠い国」の問題と捉えられてしまいがちな「紛争」「テロ」の問題と向き合い続けるのか。その深層に迫ります。

「休学」への決意と活動

なぜ休学?

ーすぎちゃんは大学3年生を終えてから、休学を選択していたね。なぜ休学を決意したのかな?

わたしが大学4年生で執筆する卒業論文は、「ルワンダ内戦後のひとびとの関係の再構築」をテーマに設定していて。

大学3年生を終えた段階で1年間休学をして、ルワンダでインターンシップをしながら、現地の大学に留学生として通うという計画を立てていたの。

1年の調査期間を有意義に、また安全に過ごせるように、大学3年生の夏休みには、一度ルワンダを訪れたの。

現地では、次の年(2020年4月~)のフィールドワーク調査に向けて現地を見て回ったり、日本人の人脈を作ったり、現地の資料館を訪れたりしたよ。

▲ルワンダでお会いした義足製作のNGOムリンディ/ジャパン・ワン・ラブ・プロジェクトのルダシングワ真美さんと

 

(そして実は、ルワンダに行く直前に南アフリカにも寄ったんだ。そこでは、世界中のクリスチャン学生と学生を支えるスタッフが一堂に会したんだ。

総会っぽいのもあったんだけど、他には聖書のメッセージを聞いてクリスチャンとしての自分と向き合ったり、世界中のクリスチャン学生と友だちになれたよ!

参加できたのはちょうど日程が空いていて、私が所属しているキリスト者学生会(以下、KGK)のスタッフに誘われたんだ。

大学生になった時に「大学生の間にアフリカに行きたい!」っていう夢が叶っちゃったんだ(笑))

 

ーフィールドワーク調査に向けて、ゼミの先生に進められて休学への念入りな準備を重ねていたんだよね。

でも、コロナが広がって4月の渡航もかなわないってなった時に、就活もまともにやってなくて、卒論のテーマも変えなきゃいけない状況で…。

さらには大学生活最後の1年の期間をオンライン授業で過ごすことに抵抗があって、コロナの拡大も深刻に考えてなかったから休学を続行して渡航の機会をうかがってたの。

休学期間の活動

ーコロナが世界中で広がってしまった関係で、休学時にやりたかった活動はなかなか叶えられる状況になかったよね。休学期間中はどのように過ごしていたのかな?

休学期間は、大きく分けて3つのことをしていたよ。

1つ目はアルバイト。本来だったらルワンダに行くはずだったから、そのための資金を少しでも稼ごうと思って。

2つ目は学内のサークルの活動に出たり、関東地区やブロックの活動に出たり。あとは、KGKの同期会の世話役もやってたからその活動とか。コロナ禍でも絶望しなかったのはここの仲間の励ましが大きいね。

そして3つ目はアクセプトでのインターンシップ。この団体ではソマリア・ケニア・インドネシア・イエメンで紛争やテロの問題を解決するために活動を行っているよ。

わたしはこの団体のイベント担当として、平均して毎月24回、いま(2020年12月)は毎月8回イベントを開催している。

休学してからは、インターンの仕事だけではなく事務の仕事もやってて、経理とか総務とかにも携わっているの。

アフリカのテロ・紛争の解決に挑む

インターン生としてメンバー入りを決意したきかっけ

ーすぎちゃんがアクセプトでのインターン生としてメンバー入りを決意したきっかけを教えてほしい!

▲アクセプト・インターナショナルのロゴ画像

 

大学2年生の頃、国際協力に興味がある大学のともだちとおしゃべりしていたことがきかっけなの。

おしゃべりの内容の前に前提を話すと、わたしは実は3か4代目くらいのクリスチャン家系で、両親が教会に行くから私も自然と教会に行くし、なんなら生まれる前から教会に行っていた(笑)

だから、なんというか、教会で日曜の礼拝をすることは「習慣」で、神様がいるのは当然のことって思ってたの。

でも、高校から大学進学にかけて、この自分が信じているものが嘘だったら虚しいなって思うようになって…。

だから、KGKにも誘われてたし、大学生活の間になんでキリスト教の神様を信じるのかって考えることにしたの。

いろいろ思い出したり考えたりするうちに、「聖書では、神様は全世界・全時代のひとびとを愛していることが描かれている。だとしたら、社会的に見て悪いことをしている、助けるに値しない、関わるに値しないって思われている人たちのことだって、神様の愛が注がれているはず、向き合わなくていいなんて言えないはず」って考えるようになった。

 

で、友だちとのおしゃべりに戻るけど、「こうやって考えてて、将来もそういう人たちに関われることをしたいんだよね」って話したときに、友達が大学の講義にゲストとして来ていたアクセプトの代表のことを紹介してくれたの。

アクセプトの考え方は、自分の考えと合致している!って思って興味を持った。

すぐにでも活動に参加したかったけど、大学2年生は授業でとても忙しい時間を過ごしていたからグってこらえて、大学2年も終わる春休みからメンバーとして関りを持つようになったよ。

いわゆる“加害者”にこそ手を差し伸べる

ーすぎちゃんの考えと合致したアクセプトは、具体的にどのような考えを持った団体なのかな?

※以下の内容は団体を代表する言葉ではなく、すぎちゃん本人の見解になります。

いわゆる“加害者”とされる人びとにこそ支援を行って、彼らの存在そのものを受け入れるという考え方をもってる団体だよ。

例えば戦争や紛争、テロの加害者と呼ばれる人たちは、一般的には「悪い人」と捉えられがちだけれど、そうなってしまう背景にはさまざまな経緯があるということを見過ごされてしまっている。

たとえその“加害者”みたいに呼ばれる人たちが社会に復帰しようとしたとしても、差別のまなざしで見られたり、仕事に就けなかったり、社会の中に居場所がないことが多い。

だから、彼らを「“加害者”であっても1人の人間である」と捉えて、主張と、さらには彼らの思いやこれまで暴力に加担しなければならなかった背景にどんな問題を抱え、経験してきたのかにまずは耳を傾けてる。

それから、一緒にその問題に向き合って、これから社会で生きていくときに暴力ではない道をどう選びとっていくかを考えて、一歩ずつ一緒に歩いていくこと、つまり、彼らを“受け入れる”ことを大切にしてるんだ。

“紛争のど真ん中”に切り込む活動

憎しみの連鎖を断ち切る【アクセプト・インターナショナル】

すぎちゃんは、アクセプトでの活動と、自分のやりたいことはどんな点が合致していると思う?

私の野望”は、「世界中の人が笑顔で暮らせる世界にしたい」というものなの。

だから短期間であまりに多くの人の笑顔を奪う「戦争」というものは解決しなきゃいけない問題だなって思う。

私は世界から「戦争」を無くすことに関わりたい。こういう思いを持っていて、アクセプトの活動も「テロ」や「紛争」に“直接”関わっているから、自分の思いを実現させられると考えているよ。

 

アクセプトは“紛争のど真ん中”に関わるものなの。紛争に“間接的に”関わる活動としては、例えば「難民支援」「教育支援」「貧困問題の解決」とか。

どれも、地理的には紛争の中心地、爆撃が続いている地域からは離れた場所でされることが多いと思し、後者の2つに関すれば時間的にも紛争の前や後のイメージ。

 

それに対して、アクセプトは、紛争が今まさに起こっている地域で、“直接的に”関わる活動が多い。

例えば、ケニアでは紛争を起こしてしまう組織に若者が流れないように阻止したり、ソマリアでは紛争中の地域へ飛行機を飛ばして、今まさに紛争を起こしてしまっている組織から若者を脱退させるようなフライヤー(※ビラやリーフレットのようなもの)を配るというような活動などをしていたりする。

実際にビラを自分で見たり、ビラを見た家族の働きかけで、90人以上の人が投降してきて受け入れられてきたんだ!

あとは、紛争に関わって刑務所にいる人の社会復帰に向けたワークショップを行ったり、一方的に教えられるイスラム教の宗教再教育ではなくて、先生と質問を投げかけ合ったり考え合ったりする再教育もしているし、専門の心理カウンセラーに来てもらって、投降してきてトラウマに苦しんでいる人たちを心理面でも支えているよ。

 

私はまだ現地に行って直接活動をしたことはないけれど、実際に現地に赴いて活動をしているアクセプトのメンバーから生の体験談を一番近くで聞くことで、「遠い国の人」ではなく、自分も関わっている「身近な存在」として現地の人の顔が浮かぶようになるの。

もちろん、アクセプトのインターン生としての活動は簡単なものではないし、大変なこともある。でも大変だなって思うたびに現地の人のことを考えることが、もう少し頑張ってみよう!と思う原動力になっている。

誰の愛も届かないところに。

ー日本から見ると、アフリカの国々は地理的にとても遠いし、「テロ」や「紛争」という問題も身近に感じることは難しいと思うの。すぎちゃんはなぜ一般的に「遠い」問題に思われがちな活動をし続けることができるのだろう?

私は、もう1つ大切にしている思いがあって。それは、「誰の支援も届かない、誰の目も届かないところで活動したい」というもの。

だから日本から遠い地域であるアフリカにも興味がある。戦争・紛争の最中で、人の温かさに触れたり、自分が安心して居られる居場所を持つということは、なかなか難しいよね。

私はそういう、「誰の愛も届かないところ」で活動していきたいと思っているよ。

これからの未来にむけて

▲アフリカ渡航の時の荷物に挟まれるすぎちゃん

(バックパックで3週間なんて初だったから荷物多すぎました。

理想の現実の狭間で

ーすぎちゃんは本来休学期間中に挑戦してみたかったことが、コロナによってできなくなってしまったよね。そういう中で、すぎちゃん自身、休学してよかったなと思っている?

私は休学してよかったなって思っているよ。だって休学しなかったらきっとずっと勉強・就活・バイトで忙しくしてしまっていて、ゆっくり過ごす時間はなかったなって思って。

もちろん、ルワンダでのフィールドワーク調査をするという目標は今も叶えることができていないし、コロナじゃなかったら…と思うこともある。

「自分なにやってんのかな…」って思うこともある。

でも、この期間に本来参加することができない予定だったフォーラムに参加したり、いろんな人とのつながりを作ることもできて、決して悪いことだけではなかったの。

最近は途上国・国際協力のメディアであるganasという団体が提供しているサービスで、ベナン人が教えるフランス語を勉強し始めていて(笑)。

「大学で」学ぶことの意義

ーすぎちゃんは大学外で自分の活動の幅を広げているよね!すぎちゃんにとって、「大学」という環境で学ぶことの意義ってどのように捉えているかな?

私の大学では英語の4技能の授業がみっちりあるから、英語の力は鍛えられたかな。南アフリカに行った時も、英語をどう身につけたのか聞かれたけど、「う~ん、中学・高校・大学の授業かな」って言ったらびっくりされた(笑)

それに加えて、「類は友を呼ぶ」ではないけれど、自分が尊敬したり憧れる人を見つけられたり、切磋琢磨できる環境があると思っている。

そういう環境の中で、情報交換ができることで、常にいろんな視点を取り入れて生活できるということも大学の魅力だと思う。

ただ講義を聞くだけではなく、その講義を聞く中で自分の意見を持って考えたりすることで、その学びが自分の考え方を多様化させてくれたり、今まで考えてたことは学問的にもあってるのかって気づけたりできて面白いと思ってる。

最後に。

ー最後に、すぎちゃんから読者にメッセージをお願いします!

まず1つ目は、「やりたいことがあって、やれる環境があるならやってみる」ということを伝えたいかな。

でもね、私自身実は今やりたいこと見失っているんだよね(笑)

将来の夢もあるし、関わりたい分野もある。でもそれに向けてどういう職業で関わるのかをすごく悩んでいて。

私にとってルワンダについての卒論を書き上げることは将来の理想に近づくための一歩と捉えていたの。

でも今はそれができない状況となってしまっている。だからこそ、今目の前にある、アルバイトとかインターンとか、与えられている役割を一生懸命果たそうって思って

 

2つ目に、「“助けて”と声をあげること」。これを伝えたい。

というのも、コロナによって何回も留学の夢が閉ざされてしまった。事情があってルワンダのインターン先にも行けなくなってしまったり、留学先の大学の定員がオーバーしてしまって受け入れ先が完全になくなってしまったの。

でもそのときに行き場所がなくなったときに“助けて”と声をあげることでその状況を乗り越えるために支えてくれる人がいた。

アクセプトの後輩育成の時も、オンラインでなかなか業務が思うように進まない時に助けて”と周りを頼る事で他のメンバーが助けてくれたり、友だちに悩みを相談することで、別の見方を教えてもらって気持ちが楽になったりした。

それがなかったら倒れていたかもしれない(笑)。だから周りに助けて”の声を届けることをためらわないでほしい。

 

 

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