【韓国留学】日韓関係を再考。第2外国語留学への挑戦から得た新しい知見

留学

今回の先輩大図鑑は、津田塾大学学芸学部国際関係学科3年のnatsukiさんにインタビューをさせていただきました。

natsukiさんは大学2年生の春休みから約10か月間に渡り、第2外国語習得を目指して韓国留学を果たしました。

現地での様々な経験の中からnatsukiさんは大きな”気づき”を得ます。その”気づき”が彼女をどのように変化させていったのでしょうか。

natsukiさんの言葉から、現在世界にはびこる国際問題に関して新しい視点から考察するヒントを得ることができます。ぜひ最後までご覧ください!

留学に踏み出す原体験

福島から東京に上京

ーnatsukiさんは福島県から都内の大学に通うために上京してきたよね。その時、何か自分の中で変化したものはあった?

まず、全てにおいて規模感が違うということかな。高校までずっと身内の友達や親戚・家族に囲まれて育ったから、新しい人と出会ったりするという経験があまりなかったの。でも、東京に出てきて、自分とは育ってきた環境が全然違う人達に出会った。自分の周りには都会で育った人達がいなかったからね(笑)

 

ーそうだったんだね。新しいものに出会うと「自分はその世界を知らなかった…」とマイナスに捉えてしまうこともあると思うのだけれど、natsukiさんはどうだった?

自分はとても臆病なタイプなんだけど、大学生になって上京するからには「何でもやってみよう!」という思いをもっていたの。それで留学にも挑戦しようと思って大学2年生の春休みから約10か月間、韓国留学に挑戦した。

▲韓国でよく行っていた焼肉屋さんの写真

留学を目指したきっかけ

ーnatsukiさんが留学に行こうと思ったきっかけって何かな?

お母さんが学生だった頃に、アメリカに留学を経験したことがあって。小さいころから留学はとても楽しいよ、と言われて育ったから、自然と自分も大学生になったら留学に行くんだ!と思っていた(笑)

 

ー「留学」というと、大多数の人はまずアメリカとかイギリスとか、英語圏への留学を検討するのかなと思うのだけれど、natsukiさんはなぜ「韓国留学」を目指したのかな?

実は高校3年生の頃から自分は韓国に留学に行きたいと思っていたのね。今の大学への進学を選んだのも、韓国に行ける留学制度があることが影響したかな。

幼かったころにテレビで拉致問題やミサイル問題とかのニュースを見て、本当に恐怖を感じて、おじいちゃんにすがりながら、もし自分の身に何か起こってしまったらどうしようと泣きじゃくっていたの。怖すぎて寝られなかったこともあった(笑)

なんで近くの国なのに仲良くすることができないのだろう…と幼いながら考えていた。今も思うことは、「歴史」は事実として一つしかないのに、なんで違う意見が出て衝突してしまうのかなと疑問に思っていたの。

こういうことを考えてきたことが、韓国留学を目指すようになった原体験かな。

▲韓国の友達にもらったマカロン

大学1・2年生の頃に準備していたこと

自分は大学1.2年生の時は、韓国語能力検定の勉強や、学校の韓国語の授業の予習・復習を徹底して取り組んだり、自分が留学したい韓国の大学に留学していたサークルの先輩に直接会って話を聞いたりしていたよ。

大学の制度を利用した留学を希望していたから、大学での成績(GPA)を落とさないように普段からしっかり授業に出席するように心がけていたよ!あとは、大学の国際センターで奨学金に関する情報を集めていたかな。

留学のときに奨学金の利用を検討している人は、ダメもとであっても、奨学金制度に積極的に申し込むことをおすすめするよ!大学のゼミ選びや授業選択のときも、できるだけ韓国に関することを学べるように履修を組んでいたよ。

総じて、留学前は、語学の勉強と留学のための情報収集を同時にしていたかな!

いざ韓国留学へ

留学先での履修授業とハプニング

ー現地ではどんな授業を履修していたのかな?

韓国語能力検定3級を取得してから現地に行ったよ。でも、留学当初は現地の人が何を言っているのかまったく分からなくて本当に焦った。だからまずは韓国語で韓国語を教える授業を履修していたよ!

これから韓国留学を検討している学生に伝えておきたいのは、韓国の大学の履修登録は、すべて争奪戦だということ。履修したい授業を買い物カゴの中にあらかじめ入れておいて、授業登録の時間になると、決戦が始まるの(笑)みんな一斉にパソコンから履修登録のボタンをクリックする戦いが始まる(笑)

実はこの履修登録の方法を全く知らなくて、前期の履修登録がまったくできなかったという苦い思い出がある…。留学生で履修登録の制度を全く知らなかったということを現地の留学センターの人に相談したらなんとか履修はできたのだけれど、自分が希望する授業はあまり取れなかった…。

現地の人の履修争奪戦に勝つことは超難しいから、まずはこの制度を知っておくことが大事だと思う…。

▲語学堂(夏休み期間に通っていた語学学校)の修了式の写真

日常生活の中でハイレベルの語学能力習得を決意する

ーnatsukiさんは留学に行ってよかったと思うことは何かな?

極論日本でも語学は勉強できる。「勉強する」という意味では日本でも韓国でも変わらないと思う。でも、例えば現地で自分の銀行口座を開設しなくてはいけなくなった時や、ケータイの登録をショップで済ませないと行けない時など、日常生活を送る中で自然と韓国語が必要になる環境がとても特別だと思う。

道端で聞こえてくる何気ない会話とか、先生の発言とか、普段の生活で韓国に触れることがあたりまえになることが留学の魅力だと思うな。周りの環境って語学学習には影響が大きいと思う。

常識を覆す出来事との直面

留学前の目標を塗り替えた留学先での気づき

ーnatsukiさんの留学の目標って何だった?

もともと考えていたのは、やっぱり語学力をあげることだった。でも留学に行ってその目標が変わったの。今までは「日本から」韓国を見る・日韓関係を捉えるということしかしたことがなかった。

一つの立場からしか物事を捉えることができていないことに気づいたの。日本で生まれ育ったし、日本の教育しか受けていないから仕方ないことだとは思うんだけどね。

でも韓国に行ったことによって、現地の学生の生の声に触れることができたり、現地での授業を通して、「韓国から」日本を見る・日韓関係を捉えるという経験を積めることに気が付いた。それからは、韓国で自分の価値観を広げていくことに目標が切り替わっていったよ。

▲旅行先の釜山での写真

あたりまえの「脆さ」に気づく。

ー留学期間中の印象深いエピソードがあったら教えてほしい!

そうだな…。私はとある授業で中国出身の女の子と仲良くなったの。その女の子が中国人の友人についての話をしてくれたことが印象に残っているな…。女の子の友人は北朝鮮の大学に交換留学生として留学経験を持っていて、留学していた北朝鮮の大学と、在籍している中国の大学との交換留学が無料でできるということを聞いた。

私たち日本人からすると、北朝鮮に留学することや、そもそも留学費用が無料であることすら驚きだと思う。この話を聞いたときに、かなり衝撃を受けたし、自分が抱いていた「あたりまえ」の認識に気づくことができたのはとてもいい経験だったと思う。

福島から東京に出てきたときに覚えた衝撃と同じように、日本から一歩出てみると自分のあたりまえがとても脆いものだと気づいたり…。こういう経験をしたことで、自分の見る視点というものがどんどん高くなった。

イメージでいうと、福島県という世界しか知らなかった自分が、今は福島県も、東京も、韓国も、空から見渡すことができるようになった感じかな。

ーなるほど。そういう視点を持つためにも、きっとnatsukiさんは留学先でも積極的に行動して、たくさんの人と触れあってきたんだろうな…。

現在進行形の日韓関係を「経験する」

▲留学期間中に通っていた国民大学

日韓関係の歴史を全身で感じる

2019年(natsukiさんが留学していた年)は三・一独立運動から100周年の年だったの。私はちょうど2019年3月1日に韓国にいて、街中でのデモ活動、日本製品の不買運動目の当たりにしたり、反日感情を抱いている子から直接日本政府に対する批判を言われたこともあった。

でもそのような経験をしたときも、私は怒りの感情を持たなかったの。それは、多様な価値観があるということを前提として受け入れていこうという姿勢をもって留学に行っていたからだと思う。

授業でも、今まさに日韓関係の問題になっている慰安婦問題や徴用工問題について、韓国人の学生とディスカッションをする授業もあった。そういう授業の時も、意見が食い違うからどうこうではなく、「お互い生きてきた環境が違うということを前提として、どのような“言葉”を選ぶのか」ということを大切にしていた。

例えば、私が所属しているゼミの先生に指摘していただいたんだけど、「日韓併合」という言葉も、日本側の視点から作られた言葉だから、「韓国併合」という言葉を選ぶ必要があるとかね。歴史って学ぶことはとても大切なんだと思うし、私たちは無意識にいろんな言葉を使ってしまうよね。

でもその一つ一つの言葉がセンシティブな内容を含むこともあるということを忘れてはいけないなって思った。

誰が語り手なのか、今自分が居る環境を誰が作っているのか。

留学期間中に履修していた授業は、韓国人の先生が授業を担当されていた。すごく不思議なもので、日本で日韓関係を学んでいる特に気にならなかったことも、韓国という環境かつ韓国人の先生が担当されている授業を受けているという環境だと、日本が行ってきたことが全部悪いことのように見えてしまうことがあったの。だから、「環境」と「誰が話すのか」ということが、すごく私たちの考え方に影響するんだなって学んだ。

ーその経験はとても貴重だと思った。日本だと絶対に気づけない「気づき」を得ているnatsukiさんはすごいなって尊敬する。

メディアで表象される「日韓関係」と自分の身近な「日韓関係」とのギャップ

ーnatsukiさんは韓国人のお友達とどのように接していたのだろう?

まず、私はテレビや新聞で取り上げられる「日韓関係」と、私が現地の学生と触れ合う中で感じた「日韓関係」って本当に全然別物だったの。韓国の学生は本当に優しい人たちばかりだった。カードゲームをしているときに、お互いにとってセンシティブな話題になってしまいそうになったときには話題をさりげなく変えてくれたり、一緒に行こうと誘ってくれたり、日本の大学生ここまで親切にできるかなってくらい、親切だった。

 

ー私たちと同じ世代の人達が相手を受け入れようという姿勢を持っていたり、相手を心から気遣って大切にしようとしていることに感動した…。

▲韓国の街並み

新たに抱いた問題意識

もちろん、デモをしたり、不買運動・抗議活動をしたり、その事実はある。でもそれは「政治関係」において個人の意見の主張をする権利を行使しているだけであって、日本人に対して直接的に攻撃している人はとても少ない。社会的に、「政治」に関する日韓関係の表層の氷山の一角だけが取り上げられてしまっていて、本来自分の身近にある日韓関係が見えてこないということが問題だと思っているよ。

ー社会的な「日韓関係」と自分の身近にある「日韓関係」の相反する部分が見えたということだよね…。矛盾しているようで、どちらも事実であるということだよね。本当に深い洞察で驚いている。

▲好きだった学食のメニュー

これから留学を目指す学生に向けて

ーこれから留学を目指す学生さんに向けて、natsukiさんだったらどんな言葉をかけてあげるかな?

留学に行きたいという理由はいくつあってもいいと思うな。今の生活を送る中でも意識的にできることをやってみることが大切なんじゃないかなって。私の場合はまず人と関わることに貪欲になって、どうやったら相手の立場に立って考えることができるかなってまずは考えるようにしている。

あとは、留学生活中も、私生活でもそうだけれど、どうやったら人間関係気まずくならないかな、考え方が違う人と仲良くなれるかなって考えるようにしている。

今はコロナでなかなか自分の思い通りにならないことも多いと思う。でも、状況に言い訳せずに、まずは気づきのきっかけになる「知識」をたくさん入れることを頑張りたいと思っているよ。知識があれば、普段は流れていくような情報やチャンスをキャッチしやすくなると思うし、自分の選択肢を広げていくことができると思う。

日韓関係の学びを将来に活かそうというより、培った価値観や経験がいつしか自分に溶け込んで活かされていると感じられるような人生だったらいいなって思っている。

留学というとどうしても語学力の向上に学びの中心が置かれがちですよね。

しかし、natsukiさんは、現地で「本物」に触れ、新たな気づきを得ることこそが留学の醍醐味であると感じさせてくれました。

誰かに聞いた情報、誰かに教えてもらった知識だけで世界を俯瞰するのではなく、常に常識を疑い、自分にしかできない経験を通して学ぶことで、価値のある学びが得られる。

natsukiさんの言葉が、みなさん一人一人の新たな学びのきっかけになることを願っています。

Writer:namin

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