【課外活動】社会の見方を変化させた女性・ジェンダー・インクルーシブ支援の学び

課外活動

今回の先輩大図鑑は、津田塾大学の英語英文学科2年のnoelさんにインタビュー。

大学入学後、周りの影響から女性・ジェンダー・インクルーシブに対する価値観が変化したそう。その価値観が変化した経緯や理想とする社会についてなど、様々に語ってくれました。

女性・ジェンダー問題に関心のある学生、インクルーシブに関心のある学生、そして新たな価値観に出会いたいと思っている学生の皆さん、必読です!

女性・ジェンダー・インクルーシブに無関心だった大学入学当初

女性・ジェンダーへの興味の芽生え

―大学入学以前は女性やジェンダーに対してはどのような考えを持っていたの?

そもそも興味がなかった。だから、日常に女性差別・軽視はありふれているけど、あまり気がつかなくて。今は女性差別・軽視に敏感になったけれど、当時は女性差別・軽視を笑う人のような取り巻きの一員だった。身近にそういう差別があっても、重く受けとめていなかった感じかな。

 

―なるほど!今は女性・ジェンダーというトピックに関心が高いイメージだから、その振り幅がすごいね!

価値観の変化って周りの影響が大きいよね。大学入学以前は自分の周りに女性・ジェンダーへ関心を持つ人がいないかわりに、差別思考を持つ人もいたから自然と同様の差別思考に染まっていったと思う。

 

―インクルーシブに関連して、障がいを持つ人に対してはどのような印象を抱いていたの?

いわゆる障がい者にも興味がなかった。障がい者というと社会的弱者だから私たち健常者が助けなければならないみたいな、ありふれた偏った思想を信じていたかな。差別的な思考を持った人間だったと思う。

 

―そうなんだね!津田塾に入学したのもあまり上記のトピックとは関係ないということかな?

そうそう。英語の勉強をしたかったんだ。そもそも高校生の時は勝手に女性学をお嬢様教育だと思っていたし、知識がないから勝手に嫌悪感を抱いていた。他の大学も受験する中で、女性学が必修ではなかったことも津田塾を選んだ理由に関係するぐらい。

 

―女子大に入学して「女性」というワードをよく耳にすると思うけど、当初はどのように感じていたの?

別に女子大という環境に不便さは感じなかった。良くも悪くも周りの影響を受けやすくて、自分の興味も偏りやすいの。1年の時にTESS(津田塾大学英語会)に入っていたんだけれど、スピーチコンテストで友だちが「女子力」の話をしていたんだ。友だちが「女子力」という言葉に閉じ込められている必要はないみたいな話をしているのを聞いて、今までその言葉や話を笑う側だったのに、その話を笑って流してしまうことはおかしなことだったんだってようやく気がつけた。

女性学やジェンダーの話が根拠のないものだったら信じていなかったけれど、実際には女性学やジェンダーの話に根拠やデータがあって、その時に自分のやっていたことが間違ってたんだって気づかされた感じかな。

大学での学び

―特に価値観が大きく変化した出来事とかはあったの?

周りとのコミュニケーションの中で社会問題や女性学に関心がある人と関わっていくうちに、徐々に変化していった感じかな。徐々に自分も興味を持つようになって、もっと知りたい・詳しくなりたいと思ったの。今の時代ってニュースやSNSを活用して自分で情報を得ることはできるよね。

例えばニュース番組では限られた時間内に収めなければならないからこそ、取り上げられる内容が限られる。でも、取り上げられていないような細々したこととかを知りたいと思った。それからは、SNSや本などを通じて自分にとって必要な情報を選んで集めて知識を得ている感じかな。

 

―そっか!2年生になってからは自分の関心に沿った授業を取っていたの?

諸事情で授業が取れなかったんだけれど、可能であれば今後単位に関係なく出てみたいとは思っている。そういう話の流れでいくと、講演会とかには出たりしている。例えば、津田塾主催で上野千鶴子さん(日本のフェミニスト・社会学者)のお話を聞ける機会があって、これは聞くしかないと思った。

 

―つまり、自分の関心と繋がる講演会やイベントには意識的に参加してるってことかな?

意識しているというよりも、興味があるから出たいというのが大きいかも。

「席ゆずります」マークの拡散活動を手掛ける

―noelさんは女性・ジェンダー・インクルーシブに対する自己の価値観の変化を感じつつ、「席ゆずります」マークに興味を持ち普及活動にも努めています。マークに興味を抱いた理由や活動内容に迫りたいと思います。

▲「席ゆずります」マークのデザイン

席ゆずりますマークWEBサイト

―「席ゆずります」マークの拡散活動をしてると思うんだけど、どのように出会ったの?

ニュースやSNSを通してたまたま流れてきたのかな。偶然の巡り合わせって感じだね。

―でも、出会ったときに強い印象を受けたわけだよね?

まだ社会も捨てたもんじゃないなって思った(笑)どちらかというと悪いニュースがピックアップされがちだけれど、このマークのようにやさしさが見えるのっていいなって思ったの。席を譲ってほしいと言える人が増えることはもちろん、それ以上にマークを身に付けることで「こういうのあるんだ。自分も賛同しよう」って思う人が少なからずいると思う。

意識を徐々に変えていく方面に社会が向けばいいなと思う。他にも、周りに困っている人がいないか見渡すようになったりとか。だから、周囲から得られた意識から自分も周りも変わっていくことが大事なのかなって思う。その意識や社会の変化に繋がる商品かなって思った。

 

―そうだったんだね!その後、具体的に拡散活動を行っているよね?

この「席ゆずります」マークをシェアしたいと思ったのは、自分の価値観が周りの影響で変化したように今度は私が周りを変えたいと思ったからなの。ただ自分だけがこの「席ゆずります」マークを身に付けていても誰かの広告塔になるかもしれない。でも、大学に置かせてもらって宣伝する方が発信力や影響力があるかなって思ったんだ。あとは、私がこういう活動に興味を持ったのが大学の同級生の影響による価値観の変化だったから、私に影響を与えてくれた人たちには賛同してもらえるかなって思ったの。

―それから、津田塾大学インクルーシブ教育支援室に直談判したんだよね?

そうそう(笑)支援室の先生にこの「席ゆずります」マークを置きたいと提案したところ、快く承諾してくれたの。広報のスペースも貸してくださったり、支援室のSNSでも情報を載せてもらえたんだ。津田塾には「席ゆずります」マークのような社会活動に賛同している先生もいたから、すんなり話が進められたかな。

 

―なるほど、ちなみに行動力がすごいよね…!

インクルーシブの授業の中で「障がい者は誰でもなり得るものだ」みたいな話があったんだ。例えば、オンライン授業もネット環境がないっていうことが障がいの1つである・年を取っていく過程や環境の変化の中でいつ自分が障がい者になってもおかしくないという話を聞いて、妊婦さんもそれの一種だなって思ったの。単に病気や五体満足ではないといった意味ではなく、いわゆる社会的サポートを必要としているという意味では障がい者の枠組みに当てはまると思ったんだ。

だから、大学内で社会的サポートを必要とする学生を支援しているインクルーシブ教育支援室なら、「席ゆずります」マークの拡散に賛同してもらえるかなって思ったの。社会的サポートを行っているということが支援室に打診をした大きな理由かな。

▲津田塾大学構内に置かれている様子

手話の団体に所属する

―「席ゆずります」マークの拡散活動以外にも、noelちゃんは他の団体活動にも参加しているよね?

インクルーシブの授業の影響で手話の団体に入ったの。高3の時に色々な言語を話せるようになりたいと思ってたんだ。でも当時は手話を使って誰かを助けたいという思いはなくて、ただ話せるようになりたいと思ったから日本語対応手話の本を試しに買ってみたんだ。

でも、実際は受験や授業に追われて取り組む余裕がなかったけれど、去年の4月頃からコロナによる自粛生活が始まったことで、勉強する時間を確保をできたから毎日少しずつ独学していたの。独学していると、手話にも人によって癖があったり方言もあるということを知ったの。だから、実践的に学べる場所があった方が自分の伝えたいことが伝わる感覚を楽しめると思っていたところ、ちょうど現在所属している手話の団体に出会ったんだ。

―でも、今はコロナで活動出来てない感じ?
主な活動が聴覚障害の子どもたちと一緒に参加する年3回のキャンプとか野外活動だから、あまり動いていない感じかな。

▲関連書籍の数々

興味の変遷が社会を捉え直す軸に

―これまでの話から主体的に行動しているということが分かったのだけれど、その原動力は何かな?

やっぱり根底にあるのは自分の興味があるものって感じかな。それが外的要因によるものであっても、自発的なものであっても、興味のあることを思いのままにやればいいかなって思ってるの。色々知っておきたいし、色々な角度から社会を見ておきたいというのがある。

 

―そっか!ちなみに、noelちゃんが持っている女性・ジェンダー・インクルーシブへの関心は自分の将来にも影響しているのかな?

企業選びの軸と関連してる。理想としては「女性にやさしい職場」ではなく、グラス・シーリングのないところかつ必要な制度があってその制度を十分に利用することが出来るところかな。つまり、自分の行動や成果が正当に評価される職場に行きたい。

―「女性にやさしい」ってよくに耳にすると思うけど、どう思っているかな?

それはやさしいの中身にもよるけど、平等じゃないなと感じることもある。インクルーシブ関連だと津田塾祭の時に、どうしたら障がい者が障がい者らしく個性を持ったまま自分を活かすことができるのかということを考えている企業と出会ったんだ。

私がこれまでに出会ったLGBTQ関連やダイバーシティを謳っている企業は、障がい者が個性を殺していかにいわゆる健常者と同様に働くかみたいな感じだなと受け取ってしまったの。女性にやさしいと同じで、言葉と中身が伴っていないと感じることがある。その言葉自体が嫌いなわけではないけれど、個性を殺してマジョリティに無理やり合わせようとしているあたりが平等じゃないと思うんだ。

 

―そうなんだね…。話を聞いている中で個人的に気になったことがあるんだけれど、コロナ禍における女性の不安定な立場をどう捉えているかな?

どうにもこうにも、その女性の不安定な立場を変えなきゃ意味がないと思ってるし、変えるために声を上げ続ける必要はあると思う。この間のJOCの森元会長の女性差別発言とかで、声を上げれば変わるんだと思ったし、希望があるなと感じた。

でも、それ以上に女性が不安定な立場に置かれている現状を知ってもらう必要があるかなと思う。あと、いくら制度や機関が揃っていても苦悩を訴え続ける社会的弱者がいるのは、その制度や機関が十分に活用出来ない・周りの同調圧力によって活用させてくれない状況がある。周りとしては理解していないわけでもないけれど、興味もないみたいな。

私が自分自身に対して思うことは、自分の価値観は幼いころに植え付けられているから、表面的に価値観が変わったと思っていても、気づいたら人やモノを差別的な目で捉えてしまっていること。だから、思いもよらぬところで自分の価値観が自分の人やモノに対する見方に影響していると認識する段階から始めないといけないなと思ってるよ。

最後に

―どのような社会が理想だと思ってるのかな?

大きな理想論で、「席ゆずります」マークみたいなやさしさの可視化も大事だけれど、そういうの関係なく必要な人が求めているサービスを気軽に求められる社会かな。目印がなくてもサポートが受けられる社会になるための第一歩として、こういうマークの存在が広がればいいなと思う。

今も制度自体がないわけではないけれど、その制度やサポートが欲しいですって言いづらい環境だよね。そのような環境が改善されて、そもそも「席ゆずります」マークなんてなくても気軽に席の譲り合いができる社会が理想だと思う。そういうマークなどがなくてもサポートが当たり前にできる社会だったり、自分のやりたいように生きることができる社会になればいいなって思ってる。

いかがだったでしょうか?新たな価値観を形成していく中で、今度は自らが主体となって活動をしている姿に感動しました。インタビューを通して、彼女のように価値観が変化するタイミングは身の回りに多くあると感じました。

同級生である筆者も彼女の活動をこれからも応援していきたいと思います。そして、読者の皆さんにとっても、このインタビューが自分の価値観を改めて見つめる機会になればと思います。

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