今回の先輩大図鑑は、津田塾大学4年の寺田梨衣子さん。
梨衣子さんは、キャビンアテンダント(以下、CA)を目指して就職活動に励んでいました。
しかし、そこに立ちはだかったのは「採用中止」という厳しい現実。幼い頃から航空業界やCAへの憧れを抱いていた梨衣子さんは、この受け入れがたい現実をどのように受け入れたのでしょうか。
CAへの憧れ
幼いころの経験
ー華やかな印象をもたれやすい航空業界は、就職先として人気があるイメージ。梨衣子さんはどうして航空業界に関心を持ったの?
小さいときに海外に住んでいたっていうのもあって、飛行機をたくさん利用していたの。当時旅行でヨーロッパに行ったりしたのも飛行機が多かったから、飛行機とか空港に対して新しいところにいくワクワク感とかポジティブなイメージを持ってたのね。
そんな中でCAという素敵な仕事にも憧れを抱くようになって。そういう幼い頃の経験が軸になって、国際的に活躍する事が出来るCAになりたいなって思うようになった。
あとは余談だけど、小学生のときに映画 “Happy Flight”を観て、「CAさん格好良い・・・なりたい!」っていう気持ちが強くなった。この映画が決定打だったかも(笑)
ー幼い頃の経験を通して、航空業界に興味を持ったんだね。お客様に向けるCAさんの素敵な笑顔。憧れの気持ちを抱いたことがある人は少なくないと思います。
夢に向けた行動
ーそれ以降「CAさんになる」という夢に向けて何か行動をおこしたことはあるかな?
小学校くらいのときに抱いていたCAへの憧れの気持ちは漠然としたものだったけど、大学を選ぶときには、就活を見据えて、CAになるための訓練を受けられるコースがある大学とか、英語をしっかりとと学べる大学を選んでいた。できることは少なかったけど、自分なりに少しずつ準備を進めていたよ。
ー大学の選択は人生においてとても大きなものだけど、その決断に「CAさんになりたい」という夢が大きく影響したんだね。一方、大学に入ってからは夢が揺らいだこともあったそう。
大学1年生の終わり頃から3年生の春まで、CAを目指すのを中断した時期があったの。大学1年生のときエアラインスクールが主催してた説明会に参加したのが発端で。
周りのほとんどが3、4年生ですごくピリピリしていて、威圧的な空気に包まれていた事に圧倒されてしまったのと、エアラインスクール(※客室乗務員(CA)を目指す人が通うスクール。大学と併行して、ダブルスクールする人が多い)と学校の両立、あと就活時の倍率の高さや難関さに怖気付いてしまって…笑。
まだ就活まで時間はあるし、他にも色んな仕事の可能性があるから色々迷うのも良いかなって思って、3年生の春まで、CAに対して憧れを持ちつつも色んな可能性を探っていたよ。
ー幼い頃から憧れを持っていたCAだけど、本気で目指そうと行動しはじめると、違和感を感じてしまった様子。
本格的な就職活動の開始
自分の可能性を探った就活初期(夏)
ーCAを志すことを辞めていた時期もあったということだけど、その後どのように就職活動を始めていったの?
就活を1番最初に始めたのは、3年生の5月ぐらい。日経新聞のセミナーで講演を聞いて、インターンシップにたくさん行くことの大切さを知って、「そっか、3年の春から始めてる人はもう始めてるんだ」と思って、色んな業界を見始めるようになった。
もちろん航空業界にずっと興味はあったのだけど、それ以外にも色んな業界を受けて自分の特徴や適正を知っておくべきだと思って、電気系メーカー、外資金融、人材、食品、あとは航空系以外の接客も、手当たり次第にエントリーしていった。
インターンシップには選考があるものと、選考がないものがあるんだけど、最初は選考があるのを結構受けてたのね。だけど書類は通っても面接は落ちるっていうことが続いて。
▲就職活動期のインターンシップについて(例)
「このままだと色んな業界を見るどころか1つもインターンに参加しないまま夏が終わってしまう!」と思って、選考なしの1dayインターンシップを中心にに参加していって、業界研究をするようになった。
▲業界研究とは
8、 9月にかけてそんな感じで進めていく中で、やっぱりお客さんと直接関わる仕事、接客系が自分には向いてるのかなあって思ったの。
審査ありのインターンも、接客系はご縁がある事が多くて、適性もあるのかなって感じた。
この頃から、「やっぱり航空業界いいかも」って改めて思うようになって、CAを目指すようになった。だから、秋冬以降は、接客業(ホテル・ブライダル・航空)を中心に就活を進めるようになったよ。
夢に向けて歩みだした就活中期(秋〜冬)
ー様々な業界のインターンシップを通して、接客系のお仕事、特に昔から憧れを抱いていた航空業界への魅力を改めて感じた梨衣子さん。再びCAになるという夢に向けて駆け出します。
航空業界は、日系大手を中心に受けていて。JALとANAが冬にインターンシップを開催していたの。
私は有難いことにANAのインターンシップに参加することが出来て。そのときにCAになりたいという気持ちがより一層強くなった。
インターンシップの中でお世話をして下さったCAの方々の洗練された立ち振る舞いや仕事に対する強い思いにとても感銘を受けて。
個人的に質問をさせて頂いた際に、CAに対する思いを伝えたら「寺田さんのこの部分がCAに向いていると思います。いつか一緒に機内で働けるのを楽しみにしていますね」と笑顔で思いやりに満ちた口調で返答して下さったの。
その帰り道は、この思いを忘れちゃいけないと思って携帯のノートに思いを綴りながら帰った(笑)
その後の就活は、航空業界に対する熱意がより一層強くなりつつもホテルやブライダルにも興味や熱意を抱いて進めていったよ。
▲空港にいって、モチベーションを高めていたときの写真
ー航空業界のインターンシップは始まるのが冬ということで、意外と遅い方だよね。それまでに何か航空業界について工夫していたことはある?
インターンシップが始まるまでは、航空雑誌を買ったり先輩にお話を聞いたりして、自分で研究していたよ。
エアラインスクールに通うという方法もあったのだけど、お金がとてもかかるし、スクールに行かずに内定を獲得した先輩のお話も聞いていたから、行かないで頑張るという決断をした。だからこそ主体的に行動して、現CAさんや元CAさんのお話を自分でコンタクトとって聞きに行ったりとかしていたよ。
お話を聞けた全ての方が本当にすごく優しくて、その方のお知り合い(私は全く繋がりがない方)に繋げて下さった事もあって、全然知らない人といきなり電話で話したりとかもした。相手の方は仕事の合間に空港から、私は家からとか(笑)日程を調整して直接お会いしてお話聞きに行ったりもしたし、多くのご縁が重なり合って、最終的に本当に有り難いことに多くの方々にお話を伺う事が出来たの。
▲CAの審査に使っていた照明写真。実物は全身写真。
コロナに揺さぶられた就職活動
就活のラストスパート(春)
ー今年は、コロナウイルスの影響で就職活動全体が大きく揺さぶられました。梨衣子さんもその影響を大きく受けた1人。
ーコロナの影響を受けながら、どのように就職活動をしてきたの?
3月くらいから感染拡大の影響で、多くの企業がオンラインを用いた選考になった。私は、夏のインターンシップに参加したブライダル企業から早期選考で選考を進めて頂いていて、早い段階でその会社から内定をいただいたの。その会社はウェディング系で、すごく素敵だなって思ってたけど、やっぱり一番なりたいのはCAだったから、内定いただいた時点では、CAの就活も一応続けるって言うかたちで内定をいただいたの。
それ以降は、CAの選考に必要な動画撮影などもしてたのだけど、4月辺りから、感染拡大の影響で今後の選考状況が見通せなくなってきてしまったの…。航空業界も一次試験を提出してから結果も分からず何も進まないっていう状況が続いて。そして5月中旬、ANAから採用を一時中止にしますって連絡がきて、JALも2週間後ぐらいに同様の連絡がきたの。連絡をもらった時は「え!?」って固まってしまって。
その直後は暫く何も考えられなくて呆然としていた。でも、少し気持ちが落ち着いてからは、今後の就活を冷静に考えないといけないなって自分を奮い立たせたの。それから就活業界の状況や今後の展開を鑑みて、結局5月末に、新卒でCAを目指すのは諦めて、内々定を頂いていたブライダル業界に進むことを決めたよ。
それでも前に進む強さ
ー再開の兆しが見えない航空業界への就職活動をやむなく断念した梨衣子さん。ショックも大きかったと思いますが、その話しぶりからは、現実を冷静に受け止め前へ進もうとする姿勢を感じました。 このような姿勢には梨衣子さんの夢や就職活動に対する考え方が影響しているようです。
就職活動を始めるまで、私にとっては「CAになる」ということがゴールだったの。
就活を始めた当初も、CAになるのが最終目標だったのだけど、自己分析や業界研究を進めて行くと同時に、様々な人の話を聞いていくうちに、憧れの職業の内定を勝ち取る事が本当にゴールなのかなって思い始めて。
正論で鼻につくように聞こえてしまうかもしれないけど、就活はゴールではなくて、自分の長い人生の中の一つの分岐点でしかないって考えるようになったの。
私達の人生って、就活が終わった時点で終了じゃなくて、死ぬまで続いていくもの。無論いつ死ぬか分からないけど、100歳まで生きられたとしたら、それまで幸せに自分らしく生き抜くために、どれだけスキルや実力をつけていけるかを重視したいって思うようになったの。
私の場合、将来は海外でも活躍出来る人財になって、自分が幸せでいられる環境を見つけて生きていきたいっていう夢があって。本当はもっと具体的な夢だけど、恥ずかしいのと興味ないと思うのでここでは割愛します(笑)
そんなことを考えているうちに、就活は「自分がなりたい人」になるためのスキルアップを考える機会でもあるし、「自分の生きたい人生を送る」ための選択肢の1つだって考えるようになったの。それからは挫折したり辛いことがあっても、「ここがゴールじゃない、その先なりたい自分になるためなら絶対諦めない」って思うようになった。
今回はCAになれなかったけれど、長い目で見れば新卒じゃなくても中途で挑戦する事も出来るし、途中で全然違う出会いや可能性に巡り合う事もある。ゴールじゃないっていうことを考えていたからこそ、割と冷静でいられたかも。もちろん、たくさん泣いたりもしたけどね。
ー理想の職につくことをゴールにするのではなく、「将来どうなりたいか」「どういう人になりたいか」を軸に思考できたことが、前を向くための大きな鍵になったんだね。梨衣子さんが今描いている「なりたい人」とはどのようなものなの?
人に良い影響を与えられる人になりたいな。例えば、自分と関わった事でその人が幸せになったりとか。その人の人生全体に影響を及ぼしたいとか、そんな大層な事ではなくて…。
その人の人生で関わった人リストの一部に「寺田梨衣子」っていうものがあった時に、その記憶が幸せに満ちた平和な世界であったら良いなって。そのためには、コツコツ色んなスキルを身につけて、色んな状況や人間関係に柔軟に対応して、複雑な世の中を生き抜いていける、そんな人になりたいなっていうのがあるよ。
就活生へのアドバイス
ーたくさんの壁を乗り越えながら就職活動を終えた梨衣子さん。最後に、これから就活をする人や今就活に苦しんでいる人にアドバイスをいただきたいです!
来年の就職活動も、今年以上に複雑で困難なものになるかもしれない。自分のなりたい職に必ずしも就けないかもしれないし、苦しくて逃げ出したくなる事もきっとあると思うけど「自分が何をすることに幸せを感じるか」「どういう人生を生きたいか」という事を考えてみると、自分の選択肢を広げられるかなって思う。
働く上・生きる上で、自分が幸せに感じることって必要不可欠っていうか、絶対大切だと思っていて。
私の場合、以前はCAになることが幸せだったけれど、そうじゃなくて「人の笑顔がみたい」とか「良い影響を与えたい」って考えたとき、今まで全く考えていなかった業界や職種のうちにそれに当てはまるものが出てきた事が沢山あった。
あとは、就活中ってどうしても友達の意見に惑わされたりとか、人の情報で落ち込んだりする事も起こりがちだけど、それって意外と「自分がどうしたいのかわかってないから落ち込む」っていうのがあると思っていて。だからそうなってしまった時は、1回立ち止まって「自分」を取り戻す時間を作って、自分自身を愛してあげてほしい。
辛くて投げ出したくなる事があっても、まずは「自分を大切に」、っていう思いを忘れずに続けていけば、乗り越えられる壁は自分で低くできると思うの。だから、私から言えるのは、とにかく自分を大切にっていうこと。
▲就活で頼りにしてた就活本と、3冊にわたった就活ノート。
コロナウイルスの影響を強く受けながら就職活動を終えた梨衣子さん。第一志望のCAになれなかったことに対して、残念だなという見方をする人もいるかもしれません。
しかし、梨衣子さんは、そんな考えを超えた先にある「将来自分がどうなりたいか」を強く意識し、現実を受け止め、幸せに生きるための最上の選択をしたと考えることもできます。
さまざまなチャンスが失われたり、当たり前のことが当たり前ではなくなっている昨今、梨衣子さんの考え方が前向きに生きるための手がかりになれば幸いです。
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