【大学生活】 イメージをカタチに。建築士を目指す一人の女子大生

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今回の先輩大図鑑では、神奈川県内の大学に通う、建築学科3年生のかなさんにインタビューをさせていただきました!かなさんは高校卒業後に1年間の浪人生活を経て、現在通う大学の建築学科へ進学しました。

建築に興味を持った意外なきっかけや、コロナ禍で十分な学びを得られないことへの葛藤、現在も日々思い悩みながらも描き続ける将来の夢など、きっとみなさんも共感できる言葉が詰まった記事となっています。

ぜひ最後までお楽しみください!

《こんな人におすすめ!》
✓進路選択・将来の夢に迷っている方
✓コロナ禍での学生生活の変化を他の視点から捉えたい方
✓建築分野に興味がある方

建築学科を目指して1年間の浪人生活

ーかなは合格をもらっていた大学への現役進学を選ばずに、第一志望校(現在かなさんが通う大学)に進学するために1年間の浪人生活を選択したよね。その時はどういう心境だったのかな?

自分の高校の理系のクラスの半分程度が浪人を選んでいたのね。だから浪人を選ぶことに対しては特に葛藤した思い出は無くて、むしろもう一年、人よりも多く高校生活を送ったような感じだったよ。普通に毎日楽しかった。午前と午後はがっつり勉強していたけれど、お昼は友達と息抜きがてらにお昼ご飯を一緒に食べて、高校の延長みたいな感じだった。

▲2年生の空きの設計課題の模型

(筆者は浪人生活というと、毎日毎日勉強ばかりでとても苦しい生活だと思っていたためかなさんの言葉に非常に驚きを覚える)

ーかなは第一志望以外の大学には合格をもらっていた学校もあったよね。なぜその大学への進学をせず、今通っている大学を目指そうと思っていたの?

当時は部活で培った目標を絶対に諦めないっていう根性があったから、第一志望を諦めてほかの大学に進学することは考えられなかったの。今思うと、現役の時の学力で大学に進学しなくて本当によかったと思っているし、第一志望校への進学を諦めなくてよかったと思っているよ!大学に入学してから、浪人時代に身に付けた基礎学力があったおかげで大学での基礎科目で苦労することはなかったかな。特に大学1年生のころは、浪人時代に勉強したおかげで、基礎科目の勉強に割いている時間を、もっと別のことを勉強する時間に充てることができたんだ。

浪人生活ね…。懐かしいよ。すっかり忘れちゃってた(笑)

 

ーえ…!?1年間苦しかったこともあったはずだよね!?忘れちゃうの…!

全然覚えていない!(笑)予備校通っていたなっていう記憶くらいだね。過ぎてみれば結構あっという間なものだね。

建築学科を目指した原点

スタジオジブリの作品が建築への興味の原点?!

ーかなが建築を学ぼうと思ったきっかけはどんなものだったの?

ジブリに出てくる雰囲気というか、イラストというか…建物がすごく好きで。実際に現実世界に存在しそうなのに建物の中の設計がありえない、みたいな感覚が面白い!!って思ったことが、建築に興味を持ったきっかけだったかな。

例えば、「借りぐらしのアリエッティ」だと、アリエッティから見る人間の住む家ってすごく大きく見えるし、アリエッティにとっては壁に刺さった釘が階段であったり。

▲借りぐらしのアリエッティ写真(参考サイト:https://www.ghibli.jp/works/karigurashi/)

「コクリコ坂から」だと、学生会館の「カルチェラタン」がとても興味深くて。カルチェラタンの中は天井がすごく高くて、階段がどうつながっているのか全然わからないし。こういうジブリの面白さをお母さんに伝えたときに、建築学科という道を教えてもらったの。建築学科に進学する子は、もともと建築・建造物に興味があったりする人が多いのだけど、私はその興味とは少し違って、画面の中の建物が持つ雰囲気や空間、そこに居る人が作り出すものとか現実のものよりも想像するものの方に興味があった。

▲コクリコ坂から カルチェラタン写真(参考サイト:https://flying-fantasy-garden.blogspot.com/2016/08/blog-post_13.html?m=1)

(筆者も実はジブリオタクだが、ジブリのイケメンな登場人物にしか目がなかったため、かなさんの新しいジブリの楽しみ方を知り、衝撃を受ける…。)

ー私なんてハウルの動く城だったらハウルしか見ていないのに…

▲筆者視点のハウルの動く城(参考サイト:https://www.ghibli.jp/works/howl/#&gid=1&pid=49)

私はハウルの動く城だったら。「動く城」のほうが気になる(笑)

▲かなさん視点のハウルの動く城写真(参考サイト:https://www.ghibli.jp/works/howl/#&gid=1&pid=49)

でも実はね、入学当初は周りの建築学科の学生との建築に関する知識の差にすごく焦っていたの。自分は「建築・建造物」に興味があったわけでは無かったから、みんなが当たり前のように持っている建築に関する知識はほとんど持っていなくて。

「建物」の見方を180度変化させた「建物を巡る女子旅」

1年生の夏休みくらいから、学科の友達と「建物を巡る旅」をしていろいろな建物に連れて行ってもらった(笑)休みさえあればしょっちゅう日本中を旅してて。海外も行ったり。普通の観光と違って、「建物を巡る旅」では旅行中は全部建物を見るんだよね。この旅行で初めて建物を「見る」ということを知ったの。この旅のおかげでジブリで抱いたイメージの他にも現実の建物もこういうものがあって面白いなって建築により興味を持つようになった。

▲始めていった建築旅行

コロナ禍で露わになったイメージを言葉にする重要性

コロナ前までの学生生活

ーコロナ前までのかなの学生生活はどんな感じだったのかな?

大学前半期のほとんどの時間を製図室で過ごしていたなぁ。

 

ー製図室ってどういうところなのかな?

大学の課題とか作業とかをやる部屋のことだよ!大学2年生になると各個人に一つずつ机が与えられて、図面を書いたり、建物の模型を作ったり、自分の生活の中心が製図室にあったくらいずっとその部屋で作業していたな。コロナ前までは、製図室が24時間解放されていて、課題の提出が近くなると学科の友達と徹夜して作業していたし、何なら寝袋持ってきて寝泊りしている友達もいた(笑)課題にいつも追われてる感じで、アルバイトも授業もあるからすごくしんどいときもあった。でも今思うと、みんなで製図室に集まって作業しては雑談して、朝日が上るまで作業して…っていう日々がとても大事な時間だったって思う。

▲製図室の様子

失って気づく“製図室”の存在意義

もしかすると、みんな同じ場所で作業すると人の考えたものを真似するていう側面が心配されるかもしれない。私も最初はそうなのかなって思ってたの。でも蓋を開けてみると全然そんなことはなくて。建築の課題って一人で黙々と作業するよりも、みんなと話しながら自分の考えを言葉にしてみたり、逆に客観的な意見をもらったりしたほうが形になっていくの。みんなそれぞれいろんな考えを持っているから一つとして同じ作品にはならないのがすごく面白かった。

コロナになってオンラインでの授業や課題に切り替わった時、こういう空間や時間がなくなってしまったからどうしていいかわからなくなって一人で悶々と過ごす日々が続いてしまったんだ。作品の規模感も製図室で作っていたものよりもなんだか小さくなる。今は製図室は昼間の時間帯だけ解放されているけど、行く頻度はかなり減ってしまったかな。

 

ー本来あったはずの製図室という「空間」がコロナで閉ざされてしまったがゆえに、そこにいた人たちの考え方までも閉ざされてしまう。なんか悲しいし、やるせない気持ちになる。

建築士って頭の中で考える創造性を持っていることも大事なんだけど、それ以上に人とコミュニケーションを取ることが大切な仕事だと私は思っている。学生までは自分が作りたいものを自由につくれるけど、社会に出たら施主さんや協働する企業とか、その人たちの希望を建物に反映させるため相手の意見を聞くことは必須。これに加えて自分のイメージを明確な言葉にして相手に伝えて、相手の意見の中に自分の意見もうまく盛り込んでいくコミュニケーションが大事な気がする。それが学生のうちからできる場所が“製図室”だったのかなって思う

ーコロナになってから学びの場も大きく変わってしまったよね。でも、コロナ前の状態に戻すためにはなんで戻さないといけないのかっていう明白な理論が必要だと思うの。単に友達を作るために大学に行かせてくださいとは言えないよね。

そんな中で、かなが伝えてくれた製図室が持つ役割というものがどれだけ学生にとって大切だったのかすごく理解できた。製図室が生み出していてた学びの機会が損失されてしまっている現状は何とかして変えていきたいって思ったよ。

▲台湾の図書館に行った時の写真

相手に伝わる形に加工するコミュニケーション術

ーコロナ期のオンライン授業でかなにとってプラスになったことってあった?

オンラインだと本当に伝えづらい。特に設計の形についてのことを伝えたいときに画面越しだとなかなかうまく相手に理解してもらうこが結構難しかったの。だからこそ、「相手に伝わる形にして伝える」ということを意識して伝えることが大事だってことに気づいたの。毎週1回教授に模型を見せながら、自分の考えをノートにまとめて伝える時間があるのね。オンラインになってからは教授にうまく伝わるように自分の考えたことと一緒に模型の写真を挿入しながらまとめるようになった。だから今までよりはちょっとプレゼンの力はついたかもしれない…!

ーオンラインのコミュニケーションって、対面のコミュニケーションとは気を付けるべきところが違ってくるよね。「相手に伝わる伝え方」を考えることって大事だなって思ったよ!

進路選択への迷いと苦難

何度も自分に問いかけた問い「自分は本当に建築に“向いている”のか」

実は、3年の春のオンラインでのグループ課題がめっちゃしんどかった。3年の秋は1人で考える時間が多すぎてしんどかった。それもあって何度も自分に「本当に自分は建築に向いているのか」って問いかけていたの。3年の秋というと、進路選択でも重要な時期だったしね。その時に教授や先輩のアドバイスもあって、建築が自分に“合っているか”“合っていないか”ではなくて、結局「自分は一番何がやりたいか」を第一に考えるようになったの。

自分が一番楽しいと思える瞬間は、建築云々ではなくて、新しくモノを作っている瞬間なの。このモノはどんなモノかって考えたとき、自分は「人の目に触れて、人にとって身近な空間」を作りたいって思うようになった。今は建築を最初から全て建てるということよりも、すでにある空間をどう変えればより良い暮らしができるかを想像して壁紙や物の配置まで決めるような店舗デザインとか、そういう方面に興味があるよ!

▲京都市京セラ美術館

大学卒業後の進路選択

ーかなは、今も紆余曲折を経ながら将来の夢を追い続けているよね。かなは大学院に進学する予定なの?

うん、大学院ではいくつかの専門分野に別れて研究をするんだけど、私は建物の設計を主に考える「意匠」という専門分野に進む予定だよ。この「意匠」という分野が、今一番自分がやりたいと思う「新しいものを創造する」ということに近いことができると思っているから!

✓建築デザイン:設計、意匠
✓建築工学:構造など
✓都市環境:まちづくり、都市計画など
✓建築理論:建築計画や歴史研究など  ※私の大学の場合

▲福島旅行で訪れたさざえ堂での1枚。

女性として建築業界に飛び込む

正しい「逃げ方」を覚えた大学生活

私ね、大学に入るまでは諦めるってことを知らなかった。部活でも勉強でもなんでも、逃げられないと思ってすごい考えて考えて、全部必死になって追ってた。でも、大学に入ってから逃げるってことを覚えたのしょっちゅう課題がきついときがあるんだけど、そういうときは少し距離をおいてみる。1日だけ趣味に没頭してリフレッシュしたり。正直何に対しても必死になっていた高校生まではつらかったから、さらっと生きれるようになって、心がずっと楽になった。

ーなるほど…。一種の「自己管理の仕方」が変わったという感じなのかな。すべて全力であることが善ではなくて、自分の気持ちとか体調の管理をちゃんとできるようになったからこそ、今まで以上に生きやすい生き方を学んだって感じかな。

大学での学びとインターンシップでの学びの掛け算

ーかなは今インターンシップをしているみたいだね!

今は個人事業を手掛けてる建築事務所でインターンシップさせてもらっているよ。模型作成のお手伝いをしたり、現地調査をしたり、会社同士のコンペにも参加したよ!

ーかなり実務的なことを経験しているんだね!

大学だとあまり図面の書き方は教えてもらえないんだけど、自分はインターン先で本物の図面を見せてもらって書き方を学んでいるよ。学校で学べないことをインターン先で学んでいるって感じかな~。

ー大学で学べないことをインターン先の仕事をとおして補っているという感じか!いいね!

将来の夢

▲東北一周旅行をした時の写真

ー私の個人的なイメージとして、建築業界ではよく3K(K:きつい、K:きたない、K:きけん)が心配されることが多いのかなって思って。とくに女性だとこのことは気になったり心配の要素に成り得るのかなって思ってしまったんだけど、どうかな…?

建築学科を卒業して建築の仕事をするとなると、自分が組織やチームを引っ張っていったり、現場で指示をする立場になる可能性もあるかもしれない。そうするとなめられたりすることや長時間労働をすることもあると思う。もちろん建築業界がいい方向に変わっているとは思いつつも、やっぱりすぐには変われないところもあると思う。

人によってどういうところで働きたいかっていうことは違ってくると思うけど、自分は自分が一番働きやすい環境がある会社を見極めて就職したいと思っているよ。逃げることを学んだことで、自分のQOLを考えて将来を描くことができるようになったかな。

 

ー最後に読者へのメッセージをお願いします!

大学生って時間があるからこそ、自分が一番やりたいことを探すことができると思うの。コロナになっていろんな制限はあると思うけど、自分を高められる時間を大切にするといいのかなって思うよ。

大学での学び、コロナ禍における現在進行形で起こっている変化、将来の進路選択に至るまで、幅広く語っていただきました。かなさんの言葉の数々は、悩んだり迷ったりすることは決して悪いことではなく、次のステップに進むための大切な経験であるということを伝えてくれました。コロナ禍の学生生活を送っていると、今までのあたりまえはもはや当たり前ではないことに気づかされます。

だからこそ、これからのあたりまえが私たちにとって今まで以上に素晴らしいものとなるように、一緒にこの状況を乗り越え、先の未来を作っていきましょう。

すべての学生に新たな一歩への手がかりを。

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