今回の先輩大図鑑は、北海道教育大学国際地域学科2年生の伊藤碧さんにインタビュー。
教育系の大学に通いながら、アートの道を突き進む碧さん。原動力となったのは、函館で出会った「荘プロジェクト」と、そこで行われる自分と人との対話でした。
大学にミスマッチを感じた彼女が、いかに活動の場所を広げ、自分の「好き」を仕事にしたのか、語っていただきました。
「人生の学び舎」荘プロジェクトとの出会い
ー碧は確か教育系の大学に通っていたよね??
そう!北海道教育大学の国際地域学科。でも、大学の活動はメインでやってない(笑)授業は受けつつ、大学外の活動を軸に発信してる!
ーそうだったんだね、今やっているプロジェクトはどんなものなの?
古民家をリノベーションしてシェアハウスをする、「荘プロジェクト」っていうもの。「人生の学び舎」がコンセプトで、荘の仲間たちと対話をしながら生活する場所なんだ。常に自分と向き合って、何がしたいか、これからどうするかを考えたり、それについて意見交換したり。就活でいうと自己分析みたいな感じ。生きていく上での目標を見つけたり、それにどう向き合っているか振り返りをするのが主な活動かな。
▲函館で行われている荘プロジェクト
外の世界に求めていた「自分の軸」になるもの
ー学部名にある通り、入学当初、碧は国際系の活動をしていたよね。遡ってみて、今に至るまでのお話を聞いてもいいかな?
高校時代、部活と勉強に追われて、自分の将来とか、やりたいことをあんまり考えたことがなかったんだよね。漠然と海外が素敵だと思っていて、上から目線なんだけど、将来は外国の困っている人々を助けられたらカッコいいなと…紆余曲折あって今の大学の国際学部に入った。大学一年の夏、インドネシアでマングローブを植えるボランティアに参加したの。それで念願の「国際協力」に参加した気にちょっとなってた。でも、自分の中ではっきりやりたいっていうわけでもなくて、解像度が低い目標だった。具体的にやりたいこととか、行きたい場所があるわけでもなかった。今思えば、その時に自分と向き合ってたら答えは出ていたかもしれない。答えを探すために「自分に問いかける」のではなくて、外で何かを見つけようとしていたの。言うなれば自分探しの旅みたいな…
▲インドネシアでの碧さん。
海外で活躍するなら、まず語学が大事だ!と思って、2020年の1月位から長期の語学留学でフィリピンに行ったんだけど、コロナで3月くらいに帰ってくることになってしまって。自分のやりたいことは外の世界にあると思っていた状態だったから、どうしよう…って。そこでちょうど函館で荘プロジェクトが始まって、参加することになったんだ。
▲フィリピンでのスカベンチャー支援の団体訪問。
ーなるほど。荘プロジェクトを知ったきっかけは?
大学のサークルの先輩だったあんなさん(荘プロジェクトの代表)が「グラレコ」っていう、話をしてそれをもとに絵を描く活動をしていたの。自分が描いてもらう時に、「碧は何をやりたいの?」って聞かれて、何も言えないことに気づいた。その時は「国際協力でこんなことしてきて〜」って答えたけど、自分薄っぺら…って思って。これはやばいな、ちゃんと考えないとなって思った。
コロナが流行り始めた3月に、わらじ荘(荘プロジェクト1軒目)の「おうちで図書館」っていう本を家庭に届けるプロジェクトが始動して、荘にはそれのスタッフとして関わり始めたの。それからは住んでないけどほぼ住んでる人みたいな状態になってて(笑)毎回顔出すたびに違うイベントやってたり、変わった人がいたりして本当に面白いなって思ってた。8月ごろに、みなも荘(2軒目)を建てるために、家を探して、修復するところから始めた。空き家問題にアプローチするプロジェクトだから、もちろん空き家の古民家。あんなさんが関わってる「木づかいプロジェクト」っていう、道南の杉を使って家を修復する活動があって、それも兼ねてみんなで家の床をワー!って剥がすところから始めた。今は水道管の凍結とかでいろいろ大変なことになってるけど…
ーあらら、今は住めない状態なの?
そう。2軒目のみなも荘の荘民は、1軒目のわらじ荘と3軒目のきらく荘に散らばって住んでるんだ。
▲みなも荘と荘民の皆さん。素敵な古民家!
荘での出会いと学び
荘で出会った個性的な人々
ー荘に出入りする人は多いの?
荘に住む荘民はあまり入れ替わることはないんだけど、遊びにくる人でたちは何千人何百人の規模で出入りしてるの。シェアハウスが全国展開する中で、この活動を法人化しようかっていう流れもある。代表の人脈がやばすぎて、なんでそんな人知ってるの!?みたいな。「学校作りたい」って言って地元の高校の先生とか連れてきたり、市役所とか政治動かせる人とかと繋がってたりして…
ー(絶句)将来国動かしそうな勢いだね…
本当に、面白いの。個人個人でやりたいジャンルが違うからこそ、いろんな人が来て、そこでまた自分が知らない分野の刺激を受けたりして。
ーそこでまたいろいろ混ざり合って新しいものが出来上がるんだね。
そうそう。小宮真司さんっていう世界的に有名なアーティストさんが函館に住んでるんだけど、その人からArt Islands in Tokyoっていう世界のアートの展覧会に一緒に出ようか!って誘われたり。パリコレ出ようか!って言われてるようなものなんだけど…名だたる人々からいろいろな技術伝承してる。
ー掘り下げるほどすごい話が出てくるね(笑)
荘プロジェクトは大人も関わってくるから、そこで生活していくうちに仕事とか就職に対するイメージが変わったんだ。人生の選択肢は幅広く存在するってことがわかった。出会った大人たちはみんな遊びの延長線上で仕事をするみたいな人たちで。北海道の人たちは人ベースで事業とかプロジェクトを行うことが多いの。集まる人が面白いから面白い仕事ができる環境で、学生、社会人みたいな肩書を取っ払って「面白そう、それやってみよう!」って新しいことを始められるあったかい雰囲気がある。
学生だからこそできる暮らし
学生でお金がない分、人脈を資源として運営しているんだ。つながった人からどんどんまた輪を広げて…みたいな。地元の人たちも助けてくれる。SNSで情報発信すると、困ってる時は地元のおじいちゃんおばあちゃんが支援物資送ってくれたり、お手伝いしてくれたりするんだ。そのお返しとして、荘をちゃんと意義のあるものにしようと思っているんだ。3軒目にできた荘に至っては、町内会の仕事とか雪かきにも積極的に参加してるよ。
ー地域住民の一人として荘に住んでるんだね。
そうそう。しかも、ビジネスでつながるだけじゃなくて、生活の中でのあったかいつながりがあるのがいいところなんだよね。
▲荘での全体ミーティング。「荘民の日」という振り返り活動
好きを仕事にする
今やっているデザインも、荘に住んでいろんな人と出会っていく中で見つけたことなんだ。自分が得意で、好きなことがデザインのチラシ制作とかで。私の場合、小さい頃から絵を描くのは好きだったけど、それを仕事にしても食べていけないと思っていたの。高校で忙しくなって描くことをやめて。荘に来て自分と向き合った時にそういえば好きだったな、って思い出したんだよね。荘でいろいろ実践していくうちに、意外とアートも仕事にできるってことに気がついたんだ。そこで固定概念が壊れた!
荘のいいところは「実践」ができるところなのね。これやりたい!っていうと、イベントのようなものを開いて、実績を積める機会が得られる。そこで違うなと思ったらやめればいいし、やりたいと思ったらそのまま続けられる、みたいな。それで今デザインを続けられてる。
荘で出会う大人の中にはいろんな道を極めたプロの人もいて。会社運営したり、アーティストとしての実績を持っていたり。そういう人たちが、学生でアマチュアの自分たちを「一緒にやってみよう!」って引き込んでくれるの。作品をSNSでアップするだけ、みたいに趣味で止まるんじゃなくて、商業的な活動につなげて実績を積んで、将来の選択肢の1つに加えられた。
ーそういえば、前にインスタグラムにスイマー(雑貨ブランド)のデザイナーさんとお話ししたって載せてたよね?
自分もまさかと思ったんだけど、一緒になる機会があって。そこでイラストを仕事にする人のモデルケースを見られたの。「好きを仕事に」は夢みがちって言われるけど、自分の中で長けているスキルを無理なく生かして、そこでお金がもらえるっていいことじゃない?楽しみのために苦しい思いをして働くって、人生の意味が変わってきている気がする。
ー碧の中で働くことに対する考え方が大きく変わったんだね。今はアルバイトとかはせずに、アートでお金を稼いでいるの?
そう!今は「商業的活動」と、「芸術的活動」の二本柱でやってる。前者は依頼を受けて制作するもので、お金とか実績にはつながるけど、クライアントさんの意向も汲まないといけないから完全に自分の作りたいものができなくて。芸術的活動の方では完全に自分の作りたいものを作らせてもらってるんだ。今はそれがメインかな。
「消費・浪費する生き方」から「投資する生き方」へ
ー荘に住み始めて、やりたいことを見つけて、碧の内面で変わったと思うのはどういう部分?
「消費、浪費する生き方」から「投資する生き方」をするようになったかな。
大学一年生の時は、多分誰しも通ると思うんだけど、「大学は人生の夏休みだ!」って言って毎晩のように遊んで騒いで…みたいな生活を送っていまして(笑)ふとした時に自分は何してるんだろうと思うことがあって。
そんな時、荘に出会った。荘民もその周りの人もみんなすごい人たちばっかりで…合同会社立ち上げてこんなことしてます!みたいな、目標に向かって突っ走ってる人たちだなって。その人たちに出会って、人生の中で純粋に楽しいと思うことも大事だけど、楽して楽しいものって結局学びがないなって…人生の中で、一生懸命になって燃える感じとか悔しいとか、そういう感情とか経験を通した上で楽しい!と思えるような生き方をしたくて。
今私が思う投資する生き方は学びがあるものなんだ。人と話したり、本を読んだりして刺激を受けて、吸収して、考えて、自分のものにして行動に移してみて…っていうトライアンドエラーを繰り返す感じで。それが時に人に影響を与えたり、評価をもらったりして、また自分で考えて…みたいなサイクルが出来上がった。
ー碧の中で自分に磨きをかけ続けるいいサイクルができたんだね。
具体的にいうと、自分のデザインの作品で影響与えたり評価もらったり、新しい仕事に繋がったり…って感じかな。
ー今度はどういうアートに挑戦するの?
春休みは、リキッドライトっていうアートにチャレンジしたいんだ。お金にはならないんだけど、うまくやれたら将来につながるかもしれない。そもそもやっている人が少ないんだけど、北海道で一人見つけたから、その人からいろいろ学ぶ予定!
ー素敵!ファンとして楽しみにしてます。
私に会いたい!お話ししたい!関わって何かしてみたい!と思ってくれた方はお気軽に連絡ください!待ってます!
インタビューでお裾分けしてもらった熱いエネルギーをそのままに記事にしました。
高校時代の友人として、碧の作品のファンとしてずっと応援しています!これからの活躍も楽しみに見守らせてください。
自分の軸になるものや、やりたいことがはっきりしない時期は誰にでもあると思います。そんな時、ふと立ち止まって、自分の内に目を向けてみることで答えが見つかるかもしれません。トライアンドエラーを繰り返し、経験を積む「投資する生き方」実践してみてはいかがでしょうか。
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